研究課題/領域番号 |
18K13084
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | COVID-19 / マイノリティの母語教育保障 / デジタル格差 / 学力格差 / 中央アジア / カザフスタン / キルギス / ロシア |
研究実績の概要 |
2020年度の研究実績は以下の通りである。 新型コロナウイルスの影響で、2020年3月に予定していたキルギス共和国とタジキスタン共和国での現地調査を実施できなかった。2020年度にはインターネットで入手可能な資料収集、分析に集中した。特に、キルギス共和国の首都ビシケク市の小中学校の教員にソーシャルネットワークを通して、キルギス語、ロシア語と少数民族語教育の状況について情報を得た。そこで明らかになったことは、新型コロナウイルスの影響による学校閉鎖と遠隔教育の導入に伴う、教授言語を問わず、教育の質の低下である。同様なことはタジキスタン共和国のタジクスラブ大学のロシア語教育の研究者へのオンラインで行った聞き取り調査からも指摘された。 これらの情報は本研究の課題の一つであるマジョリティとマイノリティの子どもたちの両方の言語的人権の保障の内実にはパンデミックのような非常事態が重なり、状況がさらに複雑になっていることが分かる。 本研究では、エスニックアイデンティティの形成・維持手段としての母語教育保障、国民統合の手段としてのドミナントな言語教育の保障、グローバル競争への参加の手段としての英語教育の保障という三つの分析の視点を設定している。2020年度に行った調査を通して、気候変動に伴う災害、パンデミックなど非常事態次の教育格差の拡大を予防する言語教育の保障という4つ目の視点を加えた。今後の研究では、この四つめの視点からの資料収集・分析に集中したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で2020年3月に予定していたキルギス共和国とタジキスタン共和国の現地調査、また2020年度に予定していたトルクメニスタン共和国の現地調査が実施できなかった。代わりに、インターネットで資料集を試みたが、中央アジア諸国において政策文書、統計、文献などはインターネットで公開されていないものが多い。特に過去の資料ほど、電子化されず、現地調査でしか入手できない。また、現地のインターネットの接続速度が遅く、zoomなどをつかったオンラインでのインタビュー調査が極めて難しい状況である。 これらの理由により、当初の研究計画は約1年ほど遅れているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には、引き続き、キルギス共和国、タジキスタン共和国とトルクメニスタン共和国における資料収集を行う。現地にいる研究協力者に資料の取り寄せ、電子化、メール添付または郵送の協力を依頼するとともに、zoomなどでの関係者のインタビュー調査を行う。2020年度に収集した資料の分析結果を日本比較教育学会で報告し、論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2020年度に計画していたキルギス共和国、タジキスタン共和国とトルクメニスタン共和国の現地調査が実施できず、国際学会への海外渡航による発表参加ができなかったからである。 2021年度には、キルギス共和国、タジキスタン共和国とトルクメニスタン共和国では現地でしか入手できない資料の収集を調査協力者に依頼し、その入手料(購入費、コピー代、スキャン代、郵送代)、専門的情報提供の謝金、国内外の学会への発表参加費、英語論文の校正費として使用する計画である。
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