研究課題/領域番号 |
18K13084
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中央アジア / COVID-19 / 教育格差 / 防災教育・訓練 / キルギス共和国 / タジキスタン |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績は以下の通りである。 2020年度と同様、2021年度も新型コロナウイルスの影響でキルギス共和国とタジキスタン共和国での現地調査を実施できなかった。2021年度には、2020年度にキルギス共和国とタジキスタンの学校教育関係者と教育政策の研究者たちに対してオンラインで行った聞き取り調査の内容の分析を行った。分析の結果、これまでの三つの視点(エスニックアイデンティティの形成・維持手段としての母語教育保障、国民統合の手段としてのドミナントな言語教育の保障、グローバル競争への参加の手段としての英語教育の保障)のほかに、新たな視点として「気候変動に伴う災害・パンデミックなどの非常事態による教育格差の拡大を予防する言語教育の保障」を加え、関連先行研究、政策文書を収集し検討した。さらに、キルギス共和国の首都ビシケク市にあるAmerican University of Central Asia(AUCA)に所属する言語教育政策研究者Karabaev Daniyar准教授にオンラインで助言・指導をもらった。Karabaev氏によると、キルギス共和国やタジキスタンの少数民族の集住するのは山岳地帯や半砂漠化地帯であり、自然災害が多い地域であるため、住民の防災意識は高いものの、母語による適切な教育と訓練は不足しているのは確かだ。しかし、母語での教育そのものが衰退しているため、社会のドミナントな言語でも防災教育・訓練を行うことが必須である。Karabaev氏の助言を踏まえ、言語教育政策の課題として少数民族に対するドミナントな言語教育の実施において防災教育・訓練の重要性を確認した。今後は、中央アジア諸国における少数民族のドミナントな言語による防災教育・訓練の実施状況を調査・分析し、本研究のまとめとを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度、2021年度には現地調査が実施できなかったものの、調査対象各国において関係者らへのオンラインでの聞き取り、インターネットで公開されている政策文書、教育統計などを入手できた、文献研究と併せて研究を進めることができた。2021年度は科研費の最終年度であったが、調査内容の分析と論文執筆にはさらに1年に期間が必要であるため、補助事業延長承認申請を行い、2022年度への延長が承認された。今年度は研究のまとめを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
科研の最終年度にあたる2022年度にはこれまでの調査内容のさらなる分析を重ね、研究をまとめる。中央アジア4カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス共和国とタジキスタン)の言語教育政策における母語教育、国家語教育、英語教育の政策と実施状況を比較分析し、共通点と相違点を示した上で、日本の言語教育政策に対して得られる示唆を検討する。研究成果を日本教育学会第81回大会、母語・継承語・バイリンガル教育学会2022年度研究大会、日本中央アジア2022年度年次大会で発表し、論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で2020年度、2021年度に予定していた現地調査ができなかったため、旅費として計上していた予算が使えなかった。
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