本研究の目的は、教師が学校の行事として年度初めに全児童・生徒の家庭を対象に行う「家庭訪問」が果たす意義と役割について、公立小中学校の教師へのアンケート調査等を通して実証的に把握することである。子どもの貧困対策の拠点として期待が寄せられる「学校」は、子どもの貧困の発見機能を有しているという意味でも、重要な役割を担っている。教師が子どもの生活現実に気づく場面は様々であるが、家庭訪問はその重要なきっかけの一つになる。ただ、近年、教師の多忙化や個人情報保護が強調される中で、全国的に家庭訪問が廃止・縮小される傾向にある。研究期間内に起こった新型コロナウイルスの感染拡大はその傾向に拍車をかけたと言っても過言ではない。学校・教師が子どもの貧困対策に取り組んでいく上で、長年積み重ねられてきた「家庭訪問」という教育実践を改めて見直し、その意義を検討することは非常に重要であると考え、本研究では、(a)先行研究や既存データの整理・検討、(b)公立小中学校教師に対するアンケート調査、の主に2つの作業に取り組んだ。 (b)については、2021年度に公立小中学校の管理職や生徒指導主事等、22年度に学級担任等を対象に調査を実施。家庭訪問の必要性を感じながらもコロナの影響で実施できず、指導に影響が出ていること、実施ができない中でも様々な工夫を行いながら児童生徒の生活背景の理解や保護者との連携の在り方を探っていること、そうした対応をする中で家庭訪問が無くとも従来通りの指導は可能であるという判断に至り家庭訪問の廃止が決定される場合があることなどが明らかになった。 当初予定していた教師へのインタビュー調査については、コロナ禍で学校訪問や対面での調査が制限された影響で、十分なデータが得られない状態が続いたため、(b)の質問項目を工夫する形で一部対応したが、研究期間終了後の継続課題としたい。
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