本研究課題は日本の就学運動に関する歴史研究である。とりわけ、1970年代から現在に至るまでの日本の就学運動の歴史記述を中心に行い、そこで提起された日本の<共生共育>の思想を複眼的な視座から把握することに力点を置いている。 本助成期間全体を通して、日本の就学運動の資料で現在入手可能なもの、とりわけ関東圏の就学運動史の資料をできる限り入手した。申請者がこれまでの研究で入手済みの資料や論文等とあわせて、その資料が散在し入手が容易ではない日本の就学運動史のデータを充実させてきた。また2010年代以降の障がい者制度改革推進会議の議論に象徴される今日の就学運動との連続性のみならず、国際的なインクルーシブ教育の動向をも意識しながら整理・分析の作業を進めてきた。これらの資料の整理・分析の作業に加えて、就学運動に関わってきた多くの方にインタビューにご協力をいただき、データを得ることができた。また、これらの作業と並行して、そこで収集したデータをもとに論文化の作業を進め、研究成果の報告に努めてきた。 本研究課題は、現在並行して研究を進めている英国のインクルーシブ教育に関する政策や運動の歴史との比較の点でも有意義である。今日、障害者権利条約に象徴されるように国際的なインクルーシブ教育との関連性が無視できなくなっているが、今後は英国のインクルーシブ教育との比較を通して国際的な視座から日本の就学運動の特徴をより明確にする予定である。
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