研究課題/領域番号 |
18K13098
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研究機関 | 愛知文教大学 |
研究代表者 |
竹中 烈 愛知文教大学, 人文学部, 講師 (90762229)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 官民協働 / 学校教員の不登校観 / 不登校生の居場所 / ソーシャルベンチャー / 教育NPO |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画に従って、学校と不登校生の居場所の協働事例のフィールドワーク、教員免許更新講習における学校教員への不登校観に関する質問紙調査を実施した。 前者は、教育機会確保法が施行され、両者の協働の在り方が大きく変化する可能性が広がっている現時点における先駆的な事例をもって変化の方向性を捉えたいという意図のもとフィールドを選択した。具体的にソーシャルベンチャー(教育NPO)と某市教育委員会が協働して運営している不登校生への居場所へのフィールドワークを年間を通して複数回行った。結果、ソーシャルベンチャーと学校が価値を置くそれぞれの合理性の間に生じる葛藤が垣間見え、それらの再編成(接合)を、代表職員が持つ教員経験というハビトゥス、もしくは合理性に基づく問題解決思考が可能にしていることが窺えた。これらのフィールドワークの中間報告を2018年9月の日本教育社会学会において口頭発表(「フリースクール的な価値を基にした不登校支援の実際-ソーシャルベンチャーNPO団体が運営する教育支援センターを事例として-」)を実施したが、論文実績として残していく作業は現在進行中である。ただし、本フィールドに参与するにあたって、ソーシャルベンチャー(教育NPO)が持つ思想性に着目した論文実績を『比較文化研究』第15号に掲載した(「ソーシャルベンチャーの思想―不登校支援の市場化、もしくは新しい協働を見据えて―」)。 次に後者は、教員免許更新講習会において質問紙調査を完了している。講習内容をふまえた不登校(指導)観の変容、不登校指導に関する「困り事」を収集することができ、参加者の校種や役職による傾向などについて多くの示唆を得ることができた。調査結果に着目した分析し、論文実績として残す作業は現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学校と不登校生の居場所の協働事例としてソーシャルベンチャー(教育NPO)と某市教育委員会が協働して運営している不登校生への居場所へのフィールドワークを複数回行え、多大な示唆を得ることができた。ただし、本事例を包括的に捉えるための理論的枠組みの設計が予想以上に難航した。本事例が若者論・地方社会論・ネットワーク論等多様な要素を持ち合わせているがためであるが、現時点ではブルデューの<界>概念を用い、新参者の参与における資本構造の変容という観点から分析ができるのではないかという見通しを得ている。 加えて、教員免許更新講習における学校教員への質問調査を予定通り実施完了できた。調査結果のデータセット化も完了している。ただし、本データの本格的な分析および学校教員へのインタビュー調査への展開は、前述の協働事例のフィールドワークから得られた知見もふまえながら進めたいという意図もあり未完了である。 このようにそれぞれに課題もみられるが想定の範囲内であり「おおむね順調に進展している。」といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に実施したフィールドワークの結果をブルデューの社会学理論を用いながら論文実績として集約する作業を行いたい。続けて、若者論・地方社会論としても捉えることが可能であるため、複眼的な分析を試みたい。またその他の協働事例にも着目し、適宜情報収集・調査を実施したい。具体的各自治体のに教育委員会に焦点を当てて、教育機会確保法施行後に出された方針についてデータ集約したい。学校教員に対するインタビュー調査も実施し、教育行政側の変化と不登校生の居場所側の変化の間で構成される「不登校指導」について考察を加えたい。夏には海外で開催予定のデモクラティックスクールに関するカンファレンスに参加し、協働事例やオルタナティブな教育実践の最新動向の調査を実施したい。
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