研究課題/領域番号 |
18K13099
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
中島 悠介 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (60780939)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 湾岸アラブ諸国 / 高等教育 / 質保証 |
研究実績の概要 |
本研究は、アラブ諸国における高等教育質保証の様相を明らかにすることを目的とし、令和3年度はこれらの国ぐににおける質保証制度の展開を整理するとともに、新型コロナウイルス禍(コロナ禍)が継続する中で高等教育機関に対してどのような影響が及ぼされているのかを、アラブ首長国連邦(UAE)の外国大学分校の事例に検討した。 コロナ禍によりUAEでも高等教育機関や外国大学分校に対して一定の制限が課されているが、連邦政府に属する教育省が国内の首長国・私立高等教育機関に対して厳格な規制やガイドラインを課しているのに対し、ドバイの外国大学分校にはドバイ政府の知識・人材開発庁(KHDA)が独自に規制・ガイドラインを設定している状況がある。外国大学分校もこれらの規則に従い、関連機関から許可を受け、連携をとることが求められる。本校の取り組みを積極的に打ち出すのではなく、UAE政府やドバイ政府に対応していることをアピールすることにより、学生への周知を実施している状況がある。ソーシャル・ディスタンスや入構時の体温検査、消毒剤の設置と清掃の徹底、課外活動やイベントの中止・延期といった対応については、一定の共通性が見られた。その一方で、授業形態についてはオンライン・対面・ブレンドで実施するといった多様な形態が見られた。また、授業形態によって基本的には授業料の改定は行われないものの、マードック大学のように授業料の減額や奨学金を拡充した分校もある。 これらの成果は、中島悠介「新型コロナウイルス禍における外国大学分校-アラブ首長国連邦を事例として」『日本比較教育学会第57回大会(ラウンドテーブル)』筑波大学、2021年として発表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は、新型コロナウイルス禍の状況に対し、UAEで展開する外国大学分校がどのように対応しようとしているのかを明らかにすることを通し、現地の高等教育部門への影響を考察することができた。また、海外渡航が困難な中で、サウジアラビアやヨルダンを含めた国ぐににおける高等教育制度および質保証制度について文献資料を中心に近年の動向を整理し、次年度以降の研究を円滑に進めるための土台が形成できたと考える。 その一方で、令和2年度に引き続き、令和3年度も新型コロナウイルス禍の状況において湾岸アラブ諸国やエジプト、ヨルダン等への渡航が困難であり、現地調査ができなかったことから、高等教育機関を取り巻く質保証のアクターの関与の様相について十分な情報収集および考察ができなかった点で、当初予定していた最終年度時点における本研究の進捗状況はやや遅れている。令和4年度に本科研の延長が認められたことから、可能であれば上記の国ぐにへの現地調査を実施し、追加の情報収集に努める。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス禍の状況は令和4年度も引き続き継続することが見込まれるものの、地域研究などの分野において徐々にアラブ諸国での現地調査が再開されていることから、今後は積極的に追加の調査を実施する方針である。特に、UAEやカタールといった湾岸アラブ諸国、ヨルダン・エジプトといったアラブ諸国における高等教育質保証に関連する情報の不足が見られる場合、必要に応じて現地調査を実施し、情報の補てんに努める。また、海外への渡航が困難な場合は、現地の高等教育部門・質保証関係者に対して、zoomやメールを活用して必要な情報を得るようにする。これらの調査を実施しつつ、アラブ諸国における高等教育質保証に関わるアクターの関与の様相について、引き続き考察を進めていきたい。 上記の現地調査の準備を進めたうえで、本科研最終年度の成果として、これまで収集・分析してきたアラブ諸国における高等教育制度・質保証制度に関する情報を整理し、最終報告書の作成を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研はアラブ諸国における高等教育の質保証の様態を明らかにすることを目的としており、そのため現地における調査が欠かせないが、令和3年度は新型コロナウイルス禍のために海外渡航に大きな制限があり、予定通りに研究費を使用することが困難であった。加えて、成果発表のための国内学会・国際学会への旅費としても使用できなかったため、次年度使用額が生じることとなった。 新型コロナウイルス禍の状況はしばらく継続することが見込まれるものの、徐々に渡航制限の緩和が進められており、地域研究の分野を中心に研究のための現地調査が再開されている。そのため今年度は、UAEやエジプトといったアラブ諸国への現地調査や、その他の地域における国際学会の参加を予定しており、準備を進めている。加えて、昨年度に引き続き国内学会への旅費や遠隔調査に必要な機材の購入、紙および電子媒体の資料の購入、最終報告書の印刷費などに研究費を使用する予定である。
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