本研究はアラブ首長国連邦(UAE)やエジプトを中心としたアラブ諸国において、高等教育機関の質保証がどのように展開しているのかを包括的に明らかにすることを目的としている。 エジプトでは、2007年に国家教育質保証・適格認定機構が高等教育機関への積極的な質保証を開始した。その主な役割として、質保証を通し、多様な枠組みのもとで展開する高等教育機関の質の統合を進めていることが明らかとなった。一方、適格認定が専門分野別評価に大きく偏っているという課題も見られたが、その背景として、1機関の規模が大きいために機関全体の評価が困難であることや、学生募集のメリットとして機能せず、機関にとってのインセンティブが大きくないとみなされていることなどがあった。 カタールについては2010年代以降に最高教育評議会高等教育機構による国家的な第三者質保証制度が整備されているが、特に外国大学分校への影響は限定的であり、分校に対しては実際には政府系非政府機関であるカタール基金が独自にその質の保証に関与していることが明らかとなった。また、UAEでは外国大学分校に対して第三者質保証機関が適格認定や監査を行っているが、提供国の質保証機関や国際的な専門職業団体から国際的な基準や本校との同等性を満たすことが求められている一方、受入国の質保証機関からはイスラームや現地社会の要素を機関の質に反映させることが求められることで、多方面から要求される教育の質のあり方を調整しようと奮闘している状況が見られた。加えて最終年度には、2018年よりドバイにおいて分校に対する格付け制度が実施されている状況について、文献調査及び現地調査を通し、分校の運営や学生募集に対して一定の影響を与えていることを明らかにした。
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