研究課題/領域番号 |
18K13100
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
樋口 くみ子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (00758667)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不登校支援 / 貧困 / 教育機会確保法 |
研究実績の概要 |
今年度は、第一の課題である日豪の不登校支援の整理・分析を更に進め、第二の課題である「孤立した子どもたちへの支援策」の構築過程の解明、第三の課題である不登校の子どもたちの教育機会の保障に必要な諸条件の解明を目的としていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大および、5歳未満の子どもへのワクチン接種ができないなかで、同居家族への影響も鑑み、海外渡航調査を断念した。代わりに、昨年に引き続き、入手可能な資料の分析を通して、日本の不登校支援施設の整理・分析を進めた。 具体的には昨年収集した『全国フリースクールガイド』に加え、日本の不登校支援団体のミニコミ誌である「あそびのページ」と「不登校新聞」の更なる分析を進めた。分析の結果、日本では戦後、旧厚生省と旧文部省(文部科学省)が中心となり不登校対策に乗り出したものの、両省ともに家庭外で子どもを支援するという発想が強かったこと、高度経済成長期における貧困のリアリティの喪失と、1990年代の不登校の社会運動とのせめぎあいのなか、旧厚生省が不登校対策から撤退した。これにより、不登校支援施設の対象者も、虞犯少年等を含まない、より限定されるかたちとなったことが浮かび上がってきた。先行研究では、不登校言説上で、この時期に不登校概念から非行的要素が周縁化されたことが明らかになっていた。今回の分析では、言説だけでなく、実態としても同様のことが起きていることが見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
第一の課題の解明はやや進展したものの、第二の課題・第三の課題に着手できていない状況があるため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染状況と、育児中の事情をふまえ、海外渡航を行わないかたちで収集可能なデータ分析により、本研究の遂行を行う予定である。また、成果の発信として論文化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年以降の新型コロナウイルスの流行にともなう海外渡航の自粛と、前年度の学会のオンライン開催にともない旅費がかからなくなったため、次年度使用額が生じている。 次年度は、まず、第一の課題のうち豪州の不登校支援の特徴の解明を図る。具体的には資料収集(複写代としてその他に100千円計上)と各種データの収集・入力・翻訳(収集・入力補助の謝金として250千円計上)を行う。つぎに、第二の課題である「孤立した子どもたちへの支援策」の構築過程の解明については、主にWebを中心に収集可能なデータの収集と、各種データの収集・入力・翻訳(収集・入力補助の謝金として150千円計上)を行う。また、第三の課題である不登校の子どもたちの教育機会の保障に必要な諸条件の解明については、国内外の研究知見を摂取するための社会学・福祉・教育政策関連書籍(1冊5千円×50冊の250千円で計上)の設備備品費が必要となる。また、資料を電子化するためのスキャナー(60千円)、PDF編集ソフト(20千円)、文具・パソコン備品(50千円)、トナーカートリッジ(35千円)が消耗品費として必要となる。 残額386千円は返還予定である。
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