本研究の目的は、宗教系大学の学生による宗教運動と政治運動の大学に対する主張と、それに対する大学側の反応を明らかにすることで、戦後日本における大学のあり方と大学が置かれていた文脈を問い直すことである。具体的には、(1) 政治運動(団体)の宗教系大学への主張、(2) 宗教運動(団体)の宗教系大学への主張、(3) 大学および個別大学の学生の反応と帰結を、明らかにすべき課題として設定している。 令和2年度(3年目)においては、これまでの研究期間において実施してきた分析から得られた知見の整理を行った。 これまでに得られた研究の成果として、次の3点を挙げることができる。第一に、「学生運動」とされるものが何であり、何を行うものであるかは、戦後期を通じて形成され続けていったという意味で、「学生運動」は固定的なものではなかったことが明らかになった。戦後形成された「学生運動」は、他の領域との関係を構築しながら変化していった。第二に、戦後日本におけるキリスト教は、単純に社会運動と結合するものとも、また、社会運動に反するものでもないと考えられていたことが明らかとなった。すなわち、それらの「両立」については複雑な関係があり、キリスト教系大学はそれらが関係する「場」として焦点化されていった。第三に、戦後の学生運動にとって大学は1960年頃にかけて問題として捉えられていったこと、およびその過程における議論が、現在の状況を考える上で重要であることが示された。 以上から、戦後大学と社会運動を考える上での宗教という主題の重要性、および、法制・政策的な視座ではない社会制度に着目したアプローチが有効であることが示唆された。これまでの研究では看過されてきた主題を捉えることで、新たな大学の歴史を描くことが可能であることが示されたと言える。
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