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2021 年度 実施状況報告書

1963年の通達「幼稚園と保育所との関係について」をめぐる保育制度・政策史研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K13105
研究機関お茶の水女子大学

研究代表者

松島 のり子  お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (20727622)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード幼稚園と保育所との関係 / 保育・幼児教育 / 通知 / 保育制度・政策 / 幼保一元化
研究実績の概要

2021年度は、1963年「幼稚園と保育所との関係について(通知)」(以下「通知」)について、これまで収集してきた資料の分析を進めて論文にまとめるとともに、各地域における新たな資料調査を実施した。具体的には、山口県、富山県(富山市)、岐阜県、石川県、愛知県(名古屋市)、徳島県、大阪府、滋賀県の公文書館等を訪ねた。
これまで、国から発出され、各自治体に届いた「通知」そのものの所在を確認できていなかったものの、今回訪問した府県において、当該自治体で受領された(と思われる)「通知」をいくつか見出すことができた。
たとえば、富山県では県教育委員会から、各市町村へ届けられた「通知」と思われる資料が残されれいた。県内の幼稚園振興に関わって影響を及ぼした可能性が考えられる。また、愛知県名古屋市では、市に届いた「通知」の原本を確認でき、市内では当時、幼稚園と保育所の関係者が合同で会合をもつなど、幼稚園と保育所の関係をめぐって議論がなされていた様子が窺われた。このほか、岐阜県や滋賀県などで、「通知」資料が保存されていることが確認できた。さらに、「通知」そのものの所在が確認できない府県でも、1963年の「通知」発出以降、幼稚園あるいは保育所に関わって計画的に整備を進めようとしたことが窺われる資料も見つけることができた。
このように自治体によっては「通知」資料が残されていない場合があり、また「通知」を所蔵している場合でも、関連資料を含め残され方が一様ではない状況にあることが判明した。現時点で未調査の都道府県では、資料そのものが残されていない場合もあるかもしれない。それでも、所在の確認も含め、できるかぎり調査に取り組みたいと考えている。それによって、「通知」が各地域にどのように受けとめられ、いかなる影響を及ぼしたのか、実態を明らかにしていきたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度に新型コロナウイルス感染症の影響で実施できなかった全国47都道府県における「通知」資料の調査について、2021年度の後半に漸く少し実施することができた。調査できた自治体では「通知」や関連資料から、「通知」によって当該地域の幼稚園や保育所の普及整備等にどのような影響を及ぼしたのか、引き続き資料の分析を進めていきたい。また、「通知」そのものが確認できない地域で見出した幼稚園や保育所の普及整備に関わる資料についても、「通知」との関連がないか検討していきたい。
現段階では調査できた都道府県が限られるため、各地域において「通知」がどのように受容されたのか、どのような影響があったのか(なかったのか)といった、保育・幼児教育の制度・政策の実態を明らかにするには至っていない。さまざまな制限がともなうなかでも引き続き調査を進めることで、1960年代半ばに「幼稚園と保育所との関係について(通知)」が出されたことや「通知」がもった意味について考察し、日本の保育史・幼児教育史における「通知」の位置づけを再検討したいと考えている。

今後の研究の推進方策

2021年度は地域における資料調査に取りかかることができた。2022年度についても全47都道府県の調査の実施はむずかしい可能性があるため、地域を限定し、できるかぎり資料を発掘できるよう努めていきたい。
また、これまで入手できた資料の分析を進め、「通知」以前から各地域固有の幼稚園と保育所の普及状況に、どのような影響を及ぼしたのか、「通知」がどのような意味をもっていたのか、時代状況や地域の状況に即して実態を明らかにし、考察を深めて、論文にまとめていきたいと考えている。
2022年度は、研究期間を1年延長して実施させていただくことになったので、引き続きできるかぎり資料調査、分析を進めつつも、「幼稚園と保育所との関係について(通知)」の、保育・幼児教育の歴史における位置づけを考察する。その際、「幼稚園と保育所との関係」の議論は、「保育」と「幼児教育」の関係や、それぞれの本質にも関わると考えられるため、この観点からの検討も大事にしていきたい。これらを含め、「通知」が出されるまでの経緯や背景、「通知」の内容や実際、「通知」が及ぼした影響や変化の実態、という3つの軸で、成果をまとめ、研究を総括する。

次年度使用額が生じた理由

2020年度中に予定していた「通知」関連資料の全国調査ができず、2021年度後半に一部実施できたものの、当初の計画で想定していただけの調査の実施には至らなかった。そのため、次年度使用額が生じることとなった。2022年度も研究を継続し、各都道府県における「通知」資料の所在や関連資料の調査を進めていく。また、研究成果の発表にも使用していく予定である。

備考

〔書評〕松島のり子「加藤繁美著『保育・幼児教育の戦後改革』」『幼児教育史研究』第16号、幼児教育史学会、2021年11月、43-47頁

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (2件) 図書 (2件)

  • [学会発表] 「1963年「幼稚園と保育所との関係について(通知)」後の保育者養成」2021

    • 著者名/発表者名
      松島のり子
    • 学会等名
      日本保育学会第74回大会
  • [学会発表] 「幼児教育史研究の成果と課題―『幼児教育史研究の新地平』の検討を踏まえて―」2021

    • 著者名/発表者名
      松島のり子
    • 学会等名
      幼児教育史学会第17回大会(シンポジウム)
  • [図書] 私たちの保育史 1989年から2019年 未来につながる礎として2022

    • 著者名/発表者名
      生方 美恵子 発行責任、須永 由美 編集責任
    • 総ページ数
      214
    • 出版者
      東京都公立保育園研究会
  • [図書] 保育・幼児教育・子ども家庭福祉辞典2021

    • 著者名/発表者名
      中坪 史典、山下 文一、松井 剛太、伊藤 嘉余子、立花 直樹
    • 総ページ数
      640
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      9784623090846

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公開日: 2022-12-28  

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