研究課題/領域番号 |
18K13106
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
水野 賀史 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 特命助教 (50756814)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 注意欠如・多動症(ADHD) / 安静時機能的MRI / 構造画像 / 機械学習 / COMT |
研究実績の概要 |
注意欠如・多動症(ADHD)の病態解明を目的としてADHD児、定型発達児の構造画像と遺伝子との関連を検討し、2018年12月にその成果が英国科学雑誌Cerebral cortexに掲載された。以下にその成果の概要を示す。 ADHDにおいてCatechol-O-methyltransferase (COMT) 遺伝子多型が病態生理に関連していることが報告されている。しかしながら、ADHD児においてCOMT遺伝子多型が脳の構造と行動にどのように影響しているかはわかっていない。そこでADHD児における皮質厚と表面積の特徴を明らかにするのと共に、それに対するCOMT遺伝子多型の影響を検討した。ADHD群39例(11.2±2.2歳)と年齢、利き手、IQのマッチした定型発達群34例(10.5±1.8歳)に対して高解像度のT1強調画像を撮像した。FreeSurferを用いて各領域の皮質厚、表面積を算出し、機械学習を用いてADHD群と定型発達群の分類特徴を解析した。さらに、COMT Val158Met (rs4680)遺伝子データを得て、その関連を検討した。ADHD群と定型発達群における皮質厚と表面積の違いが特に前頭皮質で認められた。さらに、パス解析により、ADHD児では、COMT遺伝子多型は皮質厚と表面積双方において、前頭皮質の異常に影響しており、ワーキングメモリーと関連していることが明らかになった。これらの結果は、ADHDにおけるCOMT遺伝子多型が行動に対してだけではなく、皮質厚と表面積にも影響していることを示唆しており、このことはADHDにおけるCOMT遺伝子多型に関する神経基盤の理解に役立つかもしれない。 現在は福井大学と大阪大学とでさらにリクルートをすすめており、安静時fMRIを用いた検討も今後行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安静時fMRIによる検討に先立ち、まずADHD児と定型発達児の構造画像と遺伝子の関連について検討を行った。その結果を論文として発表することができ、一定の成果をあげることができた。また、ミーティングを重ねながら、福井大学と大阪大学とでリクルートを続けており、MRIと遺伝子データをさらに蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は蓄積されたADHD群とTD群の画像データについて、画像解析ソフトウェア(SPM, FSL, DPARSFA、FreeSurfer)を用いて比較解析し、ADHD群とTD群の間の神経ネットワークの差異を明らかにしていく。その後、差異がみられたADHDに関連する神経ネットワークについて、ADHDのリスク遺伝子との関連を検討する。また、ADHD単独例とともに自閉スペクトラム症との併存例の画像データも同時に蓄積しており、その神経基盤についても検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定に近い程度で使用したものの、わずかに余剰が出たため、次年度に情報収集や打ち合わせに使用をする予定である。
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