研究課題/領域番号 |
18K13107
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
牧田 快 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 学術研究員 (10726607)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳イメージング / 子ども学 / 養育ストレス / ペアレント・トレーニング / 社会脳 / 社会神経科学 |
研究実績の概要 |
発達障害児の養育者の子育て困難の軽減・改善は,養育者の子どもに対する不適切な対応の予防につながる。そのためには発達障害児とその養育者の子育て困難の背景にある生物学的な脆弱性を特定し,子育て困難の軽減・改善に関連したメカニズムの解明が必要である。本研究では,特にADHDを持つ子どもとその養育者の子育て困難に焦点を当て,養育者に対する子育て支援方法であるペアレント・トレーニング(PT)の介入効果と,関連する脳神経科学的基盤の変化を縦断的アプローチにより検討する。 ADHDの診断を受けた児童とその母親が対象である。令和元年度内に,計26組に対してPTによる介入を実施し,開始直前,終了直後に計2回,子育て困難指標とADHD症状,またMRIを用いて脳機能・構造の計測を行った。尚、今回の解析対象は子どもの脳機能画像が取得できた10組で,母親の半数は先行してPTに参加(介入群:6名),残りの半数(待機群:4名)は介入群のPT終了3ヶ月後に改めて参加している。介入前後の変化は,介入群と待機群の比較検討を行った。 結果,PT受講群の母親の養育ストレス指標が有意に減少し,またADHD児の子どもの行動のチェックリストの内,「注意の問題」尺度が有意に減少していた。更にADHD児の脳機能については,受講群の子のみ母親のPT受講後に,受講前よりも前頭回内側部の活動が上昇していた。前頭回内側部は,社会的理解やコミュニケーション,自他の認知に関わることが知られている。これらから,PTによる母親への介入が母親の子に対する理解と養育環境の向上を導き,それにより子の社会的認知の上昇と機能的問題の軽減に結びついたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象となる母親については当初の計画通り、質・量ともに問題のないデータの収集が完了している。子どもについてはややデータの取得率が低くなったが、解析は十分可能なレベルであると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は研究課題最終年度であるので、計画通りに、取得した脳画像、生体試料データの解析を進め、PTの介入効果の生物学的メカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度までは、データ収集のための機器使用料や被験者謝金、実験補助員への謝金を主要な使用額として用いていた。次年度では、データ解析、研究結果発表を主たる目的とし、研究目的解明のための解析ソフトウェアや検査キット、解析における研究補助員への謝金、学会発表、論文執筆等の費用を見積もっている。
計画通り、データ収集自体は本年度までで終了しているため、次年度は当該データの解析、発表のために上記の費用を用い、研究課題を遂行する。
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