研究課題/領域番号 |
18K13109
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
滝口 慎一郎 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 特命助教 (70382926)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 愛着関連障害 / 発達障害 / 児童虐待 / 中間表現型 / 脳画像計測 |
研究実績の概要 |
愛着関連障害(反応性アタッチメント障害・脱抑制型対人交流障害)は、児童虐待や不適切な養育(マルトリートメント)により養育者との安定した愛着形成が阻害されることで発症する。本研究の目的は、愛着関連障害と発達障害の鑑別困難を克服するため、児童青年期における両者の中間表現型としての脳形態・機能・神経ネットワーク、認知/行動指標データなどの発達段階における変化を、定型発達児を対照に検証することである。 本年度は反応性アタッチメント障害(RAD)の病態解明を目的として、DSM-5で診断したRAD児25名(平均13.2歳)と定型発達児33名(平均13.0歳)を対象に実施した脳MRI画像を解析した。T1 強調画像を用いて全脳の灰白質容積を測定し、虐待を受けた時期および種類が脳構造に与える影響についてランダムフォレスト法を用いて感受性解析を行った。その結果、RAD 群の左側一次視覚野の灰白質容積が定型発達児と比べて有意に低下しており、感受性期解析において、4~7歳の被虐待経験、虐待種類の併存数とネグレクト経験が灰白質容積減少に有意な影響を及ぼしていることが示された。また、DTI(拡散テンソル画像)を用いて、拡散異方性を評価するためにFractional anisotropy(FA)値を測定した。その結果、脳梁、放線冠のFA値において群間差を認めた。脳梁は認知機能に関連する白質路であり、この部位の形態不全はRAD児の問題行動に関わる臨床症状の理解につながる所見と示唆された。 今後、リクルートを引続き行い、臨床心理指標との関連、他の脳MRI画像、遺伝子データの追加や発達障害児の被験者を加えた追加解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応性アタッチメント障害群では定型発達群と比べて、灰白質容積の低下に幼児期の被虐待経験と虐待種類の併存数・ネグレクト経験が影響を及ぼしていること、DTI解析によるFA値において両者に群間差(白質線維の形態学的な違い)があることを確認したことは当該年度の一定の成果として評価できると考えている。また、発達障害群を対象とした脳画像解析では複数の解析手法を検討している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は脳MRI画像・臨床心理データ・遺伝子データ、および発達障害児を加えた追加解析に着手し、愛着関連障害と発達障害の判別につながる指標を検討していく。得られた結果については、学会発表および論文投稿により発信していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:脳画像研究による病態解明のための被験者リクルートが当初の計画通り進まなかったため。
使用計画:次年度は、被験者リクルートとその臨床心理評価に加え、遺伝子などの分子生物学的解析を予定しており、実験参加者・心理評価への謝金、分子生物学的計測キットなど多額の研究費用が見積もられるため、本年度で繰り越した金額で充填する予定である。
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