「保健水準の向上」や「社会との相互理解の形成」を目指し、人々が触れる情報の根拠に目を向けた分析を進めた。具体的には、報道の根拠としても利用されるプレスリリース(大学や研究機関から出されたもの)に注目した。学校保健の観点でも重要な課題である「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」に関連する301件のプレスリリースを抽出し、論文情報が記載されているかどうかを調べた。識別子(DOI)情報、学術誌名、プレプリントといった記載からフラグを立て、確認作業を経てデータセットを整えた。これを用いた分析の結果、論文情報が明確に示されているプレスリリースは44.2%に留まった。このことから、何に基づく情報であるかを精査することの重要性が示唆された。研究室における探索的な実験の結果を速報的に伝えているケースもあり、さまざまな段階にある情報が発信されていることを確認した。この結果をもとに、「目利きになるための第一歩」として情報に触れる際の観点を非専門家向けに共有した。併せて、関連する社会動向とその背景にある情報について、薬剤師をはじめとした専門職向けの情報発信を行った(例:ワクチン接種、治療薬候補に関する企業の情報発信、ウイルス対策製品に関する情報と行政の動き)。加えて、学会等の専門家コミュニティにおいても成果を公表した。
研究期間全体を通して、1)学校健診情報を要約したレポートを還元している連携自治体および全国の保護者を対象とした調査、2)サイエンスカフェを含むアウトリーチ、3)人々が多様な媒体を通して触れる情報の動向やその背景の分析を推進した。これらを通して、コロナ禍を経た社会との相互理解の形成に向けて多面的に取り組み、付随する成果を生み出すことができた。
|