研究課題/領域番号 |
18K13111
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研究機関 | 姫路獨協大学 |
研究代表者 |
西中 華子 姫路獨協大学, 人間社会学群, 講師 (60801595)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 母子相互作用 / 身体接触パターン / 母子ユニット / アタッチメント / 母性 / 育児支援 / 乳児 / 母親 |
研究実績の概要 |
乳児のネガティブな情動表出に直面すると,ほとんどの母親が行う,抱き上げるなどの身体接触は,小児科学や保育学では実践的重要性が指摘されてきている。しかしながら,接触面の広さ,抱きしめ方の強さ,さすり行動の有無など具体的にはどのような身体接触が有効なのか,その際のアイコンタクトや話しかけなどの付帯行動も必要なのかなどについての実証的な検討は多くない。そこで本研究では,乳児の安定的なアタッチメントの形成,母親の母性や心理的適応,共感的応答や身体接触の生起頻度に,母子の身体接触におけるどのような行動レパートリーが有効なのかについて検討を行うことを目的とする。 これまでの成果として,子の月齢が5か月以下の場合,8か月以上の場合と比べ,乳児が泣いていない「通常場面」において,キスする,なでるといった「愛情的タッチ」の頻度が有意に高いことが明らかにされた。また,通常場面における「愛情的タッチ」と母親の見捨てられ不安の間に正の相関が示された。加えて母親の不安と,通常場面における,くすぐる,つっつくといった「遊びのタッチ」,及び泣き場面における「愛情的タッチ」との間に正の相関がみられた。さらに母親の内的作業モデルのパターンを独立変数,身体接触のパターンを従属変数とする一要因分散分析を行った結果,とらわれ群の母親は泣き場面における「愛情的タッチ」を,安定群の母親より高い頻度で行うことが示唆された。 以上より,月齢の低い乳児においては,乳児の自律的反応がそれほど多くないため,愛情的タッチの頻度が多くなると考えられた。一方で母親の不安傾向が高い場合,母親自身の不安を補完する目的で愛情的タッチや遊びのタッチが頻繁に行われるのではないかと推定される。また乳児の泣き場面では,不安傾向の強いとらわれ型の母親はとりわけ強く不安が喚起され,その結果愛情的タッチを頻繁に行うのではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の収束が見えず,乳児及び母親の観察研究が非常に難航しているため。
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今後の研究の推進方策 |
このまま新型コロナウイルス感染症の収束が見込めない状況であれば,研究計画の大幅な変更や,オンラインでの調査を実施せざるを得ない。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症が収束とならなかったことから,乳児をもつ家庭への観察研究によるデータ収集を自粛した。そのため新たなデータの収集が行えなかったことから,学会発表等を行うことができなかった。また同様に,海外出張についても自粛したため,次年度使用額が発生している。
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