研究実績の概要 |
目的:本年度は、高校生を対象として睡眠時間、就床時刻、睡眠負債、イライラおよび目標行動に対する睡眠教育パッケージの効果を検証した上で、その結果を基に、ベイズ統計を用いて目標行動の改善が睡眠問題の改善に与える効果について検討した。 方法:2校の公立高校を対象とした単群前後比較試験が実施され、最終解析には478名が含まれた。生徒には、睡眠知識教育を実施し、睡眠促進行動を提示してその中から目標を3つ選択させ、その目標を5週間実践するように教示が行われた。そして、介入前後で睡眠促進行動、睡眠習慣およびイライラを評価するためのアンケートが実施された。その後、上記の試験結果を基に、ベイズ統計を用いた事後解析を実施し、睡眠促進行動による治療効果の確率を推定した。 結果:おおむね小さい効果であるものの、高校生における平日の睡眠時間と就床時刻、睡眠負債、ならびに各自が設定した目標行動が有意に改善した。また、平日の睡眠時間が7時間以上の者、午前0時以降に就床する者、睡眠負債が100分以上の者の割合も有意に改善した。一方で、週末の睡眠指標や、イライラについては有意な改善が認められなかった。上記の結果に基づくベイズ統計の結果、平日の睡眠時間、就床時刻、睡眠負債に対する目標行動の改善の事後確率は、18.2%から87.4%であった。このうち、70%以上の事後確率を示した睡眠促進行動は、休日も起床時刻が平日と2時間以上ずれないようにする(事後確率:それぞれ77.1%,84.0%, 85.7%)、帰宅後は居眠り(仮眠)をしない(それぞれ77.6%, 74.3%, 87.4%)等であることがわかった。 結語:睡眠教育パッケージは高校生の平日の睡眠時間や就床時刻、睡眠負債の改善に有効であり、生徒の睡眠問題を改善するためには、各自の生活習慣を確認しながら適正な目標の設定を促すことが不可欠であることが示唆された。
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