研究課題/領域番号 |
18K13120
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
境 愛一郎 共立女子大学, 家政学部, 専任講師 (70781326)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 通園バス / 保育環境 / 子どもの活動 |
研究実績の概要 |
これまでに収集した通園バス車内での観察データを分析し、通園バスが保育環境として有する特質と機能を明らかにした。往路と復路を合わせて114件のエピソードから子どもの活動を抽出、活動の内容や構成人数などを整理したうえで、バスの運行時刻表上に配置し、活動の発生状況の傾向や内容的特徴を分析した。 結果として、バス内での子どもの活動は大きく5種類(「日常会話」「モノと関わる活動」「モノを介する活動」「言葉・動作を介する活動」「その他」)に整理できるとともに、それらの傾向や特徴については、往路・復路ともに運行時刻表と密な関連性が見られることがわかった。例として、出発から次第に乗車人数が増えていく往路では、コースの序盤は保育者主導の比較的小規模な活動が中心であるが、その後子どもの人数に比例するように多人数かつ動的な活動が生起し、内容的には園生活の文脈に近づいていた。一方で、人数が反対の方向に変化する復路では、出発直後の異年齢クラスにおける集会のような状況から、保育者と後半に後者する子ども数名による家庭的な場へと移行していく傾向が見出された。 最終的に、保育環境としての通園バスの特質として、活動が段階的に発展あるいは不可避的に解体される、家や園さらに地域の文化が交流すること、運行に伴って場の様相がグラデーションのように変容すること、活動が座席の位置や制約に依存すること、の4点が明らかとなった。加えて、通園バスは単なる移動手段に留まらず、子どもが多用な人間関係や文化を経験する場、家と園の間の生活文脈的な移行を支援する場としての機能を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度となる2020年度では、海外での成果発表や現場との共同研究を予定していたが、コロナ禍によりそれらの活動が大きく制限されたため。
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今後の研究の推進方策 |
実践現場と連携し、通園バスの車内環境の改善に向けたアクションリサーチおよび研修方法の開発を進める。 これまで本研究は、乗務員(保育者・非常勤職員)の業務内容と意識、おなじく運転手の業務内容と意識、さらに車内での子どもの活動状況と車内環境との関連性について明らかにしてきた。これらの成果を踏まえて、バス乗務に当たる若手保育者への研修プログラムを現場と協力して開発する。そのうえで、実際に研修に参加した保育者の意識や社内状況の変容について検討する。さらに、年度末には、研修の成果を土台に、園の全職員および他施設の保育者で議論することで、通園バスという存在を保育環境として位置付けることを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度では、国際学会での成果発表や調査協力園との協働による応用的研究、また大規模アンケート調査の実施等を計画していたが、コロナ禍により活動が大幅に制限されてしまった。 調査機関を延長した2021年度では、調査協力園での継続的な研修やアクションリサーチを計画しているため、その旅費や機器・消耗品の購入、研修中の録音・録画データの分析に残りの予算を充てる。
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