研究課題/領域番号 |
18K13126
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
周東 美材 大東文化大学, 社会学部, 准教授 (80725226)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文化主義 / 童謡 / 放送 / 米軍基地 / 渡辺プロダクション / カワイイ / 小鳩くるみ / 未熟さ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、こども文化のなかでも特に1950-60年代の複製技術に媒介された音楽文化を〈対象〉とし、メディア論の分析枠組みを〈方法〉として導入することで、戦後日本のこども文化の再編を理論的・実証的に解明することにある。 本年度の研究計画の主な課題は、昨年度の研究実績を踏まえて、第一に、理論的研究として、これまでの検討をこども文化研究に応用する方法論の確立すること、第二に、実証的研究としてNHK放文研等の資料に基づいたオーディエンス調査の再検証を行い、放送メディアの実態を送り手・受け手双方の相互作用を視野に入れて立体的に理解することであった。 第一の理論的研究の成果として、論文「童謡は「音楽文化」だったのか――1920年代におけるメディアの変容と消費社会」を発表した。本論文では、1920年代において「文化」概念が日本に紹介され普及していく過程について、桑木厳翼ら新カント学派の文化主義や森本厚吉らの文化生活運動の展開を考察することで、理論的に検討した。そのうえで、雑誌『赤い鳥』には当初、「文化」の語が不在であったことと、レコード産業などのメディアとの関係の中で「文化」の語が強調されるようになっていった過程を解明した。 第二の実証的研究の成果として、論文「茶の間に鳴り響くジャズ――1960年代における渡辺プロダクションの展開」と論文「「かわいらしさ」の上演――鷲津名都江に聞く「私が小鳩くるみだったころ」」を発表した。前者の論文では、アメリカの占領政策を通じて形成されていったメディア文化、とりわけテレビ放送や芸能供給システムについて、渡辺プロダクションを事例として考察し、家庭という新たなオーディエンスが「国民」という全体性を持ちながら形成されていったことを考察した。後者の論文では、小鳩くるみという戦後のスターを対象として、テレビ放送によって生み出されたこども文化について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19の世界的流行の影響を受け、当初予定していたオーディエンスに関するアーカイブ資料の調査に幾分の遅れがみられるため。ただし、本研究課題を遂行するうえで、致命的となるような遅れではなく、今後の研究の推進方策を講じることも可能であるため、大幅な遅れとはならない。
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今後の研究の推進方策 |
アーカイブ資料調査の遅れについては、インターネット経由で入手できるものを優先して調査することとした。また、未収集・未調査の資料の分析については令和3年度に延期し、Covid-19の感染状況を考慮しながら取り組むこととした。さらに、すでに収集済みの資料やインタビュー調査の記録を再整理・再分析することで資料の不足を補ったほか、これまで未着手であった研究に取り組むことで、制約のある状況下でも可能な研究に従事し、時間を浪費しないように心掛けるようにした。次年度は、上記の方策を継続することにより、研究課題を円滑に遂行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の世界的流行と、各種の社会的な感染対策が実施されたことにより、当初予定していた国内外での資料調査や研究会が実施できなかったため、主に「旅費」に次年度使用額が生じた。次年度は、感染状況を鑑みながら国内出張を中心にアーカイブ資料の調査・収集を行い、次年度に持ち越した研究費を執行することとする。
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