研究課題/領域番号 |
18K13130
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研究機関 | 愛知みずほ短期大学 |
研究代表者 |
加藤 望 愛知みずほ短期大学, その他部局等, 准教授 (60734473)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 一時預かり事業 / 保育者 / 実践知 / 子どもの情緒安定 / 多声的ビジュアル・エスノグラフィー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、一時預かり事業を担う保育者(以下、一時預かり担当保育者)が実践から形成した知識を明らかにすることである。一時預かり事業では、子どもたちが一時的・断続的に利用するため、不慣れな保育環境や親しみが浅い保育者、流動的な友人関係の中で過ごすことになり、情緒が安定しない場合がある。そのため一時預かり担当保育者には、子どもの情緒を安定へと導くための知識が必要となる。 研究方法として、Tobin(1988/ 1989)のMultivocal Visual Ethnographyを使用し、一時預かり事業で行われる保育を動画撮影し、後日、それを視聴しながら保育者へのフォーカス・グループインタビューを実施した。この方法で収集したデータを、質的データ分析の手法であるSteps for Coding and Theorization(以下、SCAT)(大谷,2008/2011/2019)を使用して分析した。また、本研究は12の保育施設と39名の保育者の研究協力を受け、実施している。 2020年度の研究では、結果の一端として、一時預かり担当保育者が、保育の中で情緒の安定しない子どもを「抱っこ」する際の判断とその背景にある専門性を明らかにした。一時預かり担当保育者は、子どもの情緒を安定に導くために、子どもの家庭文化に保育方法を合わせること、子どもの選択による緩やかな担当制をとっていること、子ども理解と自らの保育の意図を言語化し、同僚に伝えながら保育を営んでいることが明らかとなった。また、この研究結果は、日本質的心理学会刊行の学術誌である質的心理学研究第20巻に掲載していただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はコロナ禍により、対面でのフォーカス・グループインタビューを実施することができなかったため、スケジュール調整や段取りに時間がかかった。しかし、研究協力保育施設の力添えもあり、遅れながらも無事にオンライン会議システムを利用してフォーカス・グループインタビューを実施することができた。 現在では、当初の予定以上に多数の保育者から研究協力を得ることができている。そのため、分析には時間がかかっているが、日本国内の異なる自治体にある保育施設や、異なる保育形態で一時預かり事業を担う保育者からの多様な語りをデータとして得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
分析に時間を要しているが、SCATによる分析を得意とする研究者からの指導・助言を得ながら分析を迅速に進められるよう尽力する。また、感染症の世界的なパンデミックにより、国外への学会参加が困難であるが、文献収集を行うことや、オンラインでの学会参加から情報を得たり、研究成果を英語論文にすることで情報発信をしたりして、必要な情報の授受を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な感染症の拡大により、フォーカス・グループインタビューの実施を見合わせたことから研究計画が当初予定より遅れた。そのため、分析や研究結果発表に係る費用が次年度も必要である。また、オンライン会議システムの利用によるフォーカス・グループインタビューの実施が可能となったことから、当初の研究計画よりも広範囲かつ多数の研究協力者に協力をいただくことが可能となり、本研究にあたって膨大なデータを得ることができた。このデータの分析に時間を要することと、膨大なデータであっても深い分析を行うために、今後、当該研究で使用する分析方法に詳しい研究者の指導助言を必要とする。また膨大なデータの分析のために、ハイスペックなパソコンもしくはデータ保管に要するためのパソコン周辺機器が必要である。 また、国際学会での研究成果発表が困難であるが、英語で論文を執筆することにより、国外へも研究成果の発表を行うため、英文校閲が必要である。
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