研究課題/領域番号 |
18K13133
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
木曽 陽子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (80735209)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 保育 / 早期離職 / 離職防止 / 園内体制 / 人間関係 / 職場風土 / 新人教育体制 / 管理職 |
研究実績の概要 |
近年、保育士の早期離職が問題視されており、これは保育の質の低下にもつながる深刻な課題となっている。早期離職の理由の第一位は職場の人間関係であり、保育園内で早期離職を防ぐ体制を整える必要がある。しかし、園内体制に焦点づけた研究は少なく、保育分野においては経営管理や人材マネジメントといった視点での研究も十分蓄積されていない。そこで、本研究では保育士の早期離職を防ぐ園内体制モデルを構築することを目的とする。この目的のために、2020年度には以下の分析を行った。 1)質問紙調査の回答の分析 2018年に実施した大阪府内の私立保育施設に質問紙調査の回答から在職3年目までの保育士と4年目以上の保育士の離職率を算出し、それらと関連する要因を分析した。その結果、早期離職率等との関連がみられたのは、新人教育担当者の明確化、保育士の正規職員率、同一法人内の児童福祉施設数のみであった。しかし、単にそれらが高いと2つの離職率がともに低いということではなかった。また、その他の多くの項目で早期離職率等との関連がみられなかった。この結果から保育士の早期離職には様々な要因が関連しており、いずれか1つの対応が早期離職を防止できるという単純な構造ではないといえる。 2)インタビュー調査の実施と分析 早期離職者の少ない保育所3カ所の管理職・中堅保育士・新人保育士の3者にインタビュー調査を行った。その結果、早期離職防止には、園全体の職場風土と新人教育体制の両方が必要であることが明らかになった。また、早期離職を防止するための園内体制には、離職防止が安定させる要素と不安定にする要素の両方がみられた。また、早期離職防止において管理職の役割が大きいことや、重層的な支援体制が重要であることが示された。 上記の2つの結果について2021年度に論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、様々な場面で例年とは違う対応が求められることが多く、そちらの対応に追われ、全体として研究が遅れてしまった。また、上記感染症の影響により、ヒアリングなどの調査も実施しにくい状況にあった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでデータ収集を行った2つの調査(アンケートとインタビュー)についてのデータ分析は終了し、論文として投稿できる状態であるため、2021年度にはまずこれらを学会誌等に投稿し、発表する。また、これらの結果によって得られた園内体制モデル(仮)をもとに、調査協力園以外にヒアリング調査を実施し、最終モデルの構築とリーフレットの作成を行う。ヒアリングの際には、ZOOMなどのweb会議システムを適宜用いることで、感染症の状況にかかわらず実施できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、当初園内体制モデル(仮)に対するヒアリング調査と、園内体制モデルについてリーフレットを作成する予定であったが、予定通りに進まなかった。2021年度に仮モデルに対するヒアリング調査とリーフレットの作成・配布を行うため、ヒアリングの謝金や交通費、また逐語録の作成、リーフレットの印刷費・郵送費として使用する予定である。
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