研究課題/領域番号 |
18K13135
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研究機関 | 川口短期大学 |
研究代表者 |
井上 清美 川口短期大学, その他部局等, 教授 (30517305)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 保育者の専門性 / ケア労働 / 保育労働 / 子育て支援 / 一時保育 / 一時預かり |
研究実績の概要 |
①子育てというケアが家族から外部化され,ケア労働として再編されていく中で、子育て支援労働や保育労働がどのように位置づけられていくのかという問題意識のもと、「子育て支援労働の専門性」を「保育労働の専門性」と比較することによって考察した。研究の成果は、「子育て支援労働の専門性を問うーケア労働の分業化と再編の中でー」相馬直子・松木洋人編著『子育て支援労働を考える』勁草書房,2019年度公刊予定)としてまとめた。 ②認可保育所および地域子育て支援拠点事業に対するアンケート調査「一時保育(一時預かり)に関する調査」のデータを分析した(n=397)。「一時保育は専門性のある仕事だと思うか」という問いに対して、「そう思う」が39.6%、まあ「そう思う」が38.4%で、約8割の保育者が肯定しているものの、「どちらともいえない」という回答も18.2%を占める。また、「自分の仕事は評価されているか」という問いには「評価されている」が17.1%、「それなりに評価されている」が56.6%であるのに対し、「どちらともいえない」が23.7%を占めている。一時保育に従事する保育者の雇用形態や勤務状況は各園によって異なり、経験年数も多様であることが確認された。分析の結果は「一時保育に従事する保育者の労働環境と専門性」と題し、日本保育学会第72回大会で公表した。 ③シルバー人材センターの運営する一時保育所および子育て支援ひろばで、子育て支援に従事する高齢者を対象とした半構造化式インタビューを実施した。保育士や幼稚園教諭の免許をもつ支援者の語りから、自らの専門性を発揮できないでいるジレンマが見出された。一方、資格や免許を持たない対象者は、保育の専門知識を新たに獲得することで創造性を表出していることが示された。分析の結果は「子育てを地域で支える高齢者のジェネラティビティ」と題し、日本保育学会第72回大会で公表した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は「保育労働の専門性」と「介護労働の専門性」を比較し、現在再編が進むケア労働の分業化や統合化、階層化について検討するものである。これまで「保育労働の専門性」に関しては、文献研究およびアンケート調査、インタビュー調査を通じていくつかの知見を得たものの、「介護労働の専門性」の方はまだ研究が進められていない。「介護労働の専門性」に関する先行研究や文献を収集し、関係団体に対して早急にヒアリングを行う必要がある。また、「保育労働の専門性」についてもこれまで断片的に得られた研究成果を関連づけ、まとめる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
①2019年9月に、フィンランドにおいて共通ケア資格(ラヒホイタヤ)に関するヒアリングおよび調査を実施する予定である。 ②2019年10月に「介護者の専門性に関する調査」を実施するために、介護福祉士に対する事前調査を行い、質問項目の抽出や調査実施のための準備を進める。 ③2019年11月以降は「介護者の専門性に関する調査」によって得られたデータを分析考察し、保育労働と介護労働の専門性を比較する。その上で、わが国における共通ケア資格導入の可能性、課題について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に実施予定であった調査の準備が遅れ、実施できなかったため。 2019年度に調査を実施する予定である。
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