2020年度はフィンランドでの実地調査データをもとに、以下の2点について考察した。 ①フィンランド保育制度および保育者養成システムの再編 フィンランドの保育制度は制度上幼保が一元化されているものの、保育者として働く人々の職種や資格取得のルートは多様である。本研究ではコアカリキュラムやコンピテンシーを決定する国家教育委員会(FNBE)および職業学校へのインタビュー調査により、ケア労働者であるラヒホイタヤに加え、2018年には子ども教育指導員の資格が創設されたことで保育制度が再編されていく過程を明らかにした。ラヒホイタヤと子ども教育指導員は日本の高卒にあたる職業学校で養成され、共に180単位を必修とする。両課程の共通必修科目は「子どもの発達・ウェルビーイングと学習の促進」科目(40単位)であり、ラヒホイタヤには「繁栄のための機能」(30単位)、「成長発達とソーシャルインクルージョン」(25単位)、子ども教育指導員には「幼児教育の専門職とは」(15単位)、「幼児教育における教育活動の実施」(30単位)の計45単位が必要となる。子ども教育指導員に比して、ラヒホイタヤ養成課程では乳幼児を対象とする科目の比重が少なく、ラヒホイタヤの資格取得者が保育を志向しつつも介護職を選択せざるを得ない現状に影響していることが示唆される。 ②ラヒホイタヤの専門選択と職業選択 ラヒホイタヤ資格を取得した12名(フィンランド人7名、日本人5名)に対するインタビュー調査から以下の点について考察した。対象者の内、子ども・若者ケアを選択した者が5名、高齢者ケア3名、看護2名、メンタルヘルス2名であった。介護保育と介護の両方を経験した対象者の語りを中心に分析を行い、ケア労働に参入した動機や、保育と介護を移動することになった経緯、子どもに対するケアと高齢者に対するケアの共通点と相違点、求められる役割の違い等を明らかにした。
|