研究課題/領域番号 |
18K13143
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
須藤 茉衣子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 政策科学研究部, (非)研究員 (40817243)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 保育の質 / 事故予防 / 保育政策 / 子育て支援 |
研究実績の概要 |
【研究の目的】年々増加する保育需要に対応するため、保育施設の設置基準の緩和により、保育サービスの量的拡充を急ぐべきという意見がある。一方で、規制緩和とは反対に、日本の保育所の設置基準は世界と比較しても最低水準にあることなどから、基準の改善を求める声もある。双方の議論に折り合いがつかないまま、結果として、地域間や、認可・認可外等の施設の種類、設置主体や運営主体によって、その保育環境に格差が生じている。本研究では、保育を利用するすべての子どもに一定水準の保育環境を提供するために必要な「保育施設設置基準(最低基準)」について検討するため、人員配置や設備の基準と、事故の発生や子どもの育ち等との関連についてデータを収集する。 【実施内容】:1)保育施設の事故統計・事故事例データベースの分析:関連省庁や団体・機関が公表している、保育施設の事故統計や事故事例データベースを用いて、保育中の事故に関するデータ収集を行い、事故の発生件数や発生状況を整理する。今年度は、日本スポーツ振興センターが運営する学校事故事例検索データベースを利用し、平成17~29年度までの「保育中」の事故を分析した。2)保育施設でのフィールド調査:保育施設の設置基準と、事故の発生や子どもの育ちとの関連を検討するため、保育安全の専門家を対象としたヒアリングや、各保育施設が保管している保育中の事故記録(ヒヤリハットなど)の分析を行う。今年度は、これらのフィールド調査に関する研究計画を進め、来年度の調査実施を予定している。3)諸外国の状況に関する調査:保育施設の設置基準をはじめ、保育の質・安全に関して、諸外国での取組み事例や政策を整理する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、1)保育施設の事故統計および事故事例データベースの分析、2)保育施設でのフィールド調査、3)他分野での安全管理および諸外国の保育制度に関する調査、の実施を計画している。初年度に1)のデータベースの検索と情報収集、2)のフィールド調査の実施準備を進めた。今年度は、1)保育事故事例のデータベース分析に関して、日本スポーツ振興センターの「学校事故事例検索データベース」に掲載されている、災害共済給付の対象となった死亡・障害事例(平成17~29年度における保育所等での「保育中」の事故事例)を分析した。各事例の「災害発生時の状況」に関する自由記述の内容を分析し、「事故事象」「保育場面」「事故の主要因」を整理し、発生件数を集計した。2)保育施設でのフィールド調査に関して、当初の予定では今年度の実施を予定していたが、進捗状況に遅れが生じ、今年度は研究計画の立案にとどまっている。より具体的で効果的な研究計画を立て、来年度の実施を予定している。3)諸外国に関する調査に関しても、調査項目を定め進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度までに整理した保育中の事故事例の「事象」「原因」のリストを用いて、保育園看護職等の専門家を対象に調査を行い、各事故事例の「対策」を検討する。「対策」を整理することで、保育事故を予防し安全を確保するためには、研修やマニュアルの整備だけではなく、適切な保育者数の確保といった政策的な視点から、保育環境の見直しが必要であることを示したい。併せて、保育施設の事故記録(ヒヤリハット)の収集・分析を予定している。また、諸外国の保育安全に関する取組み事例や政策に関しても情報を整理したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、1)保育施設の事故統計および事故事例データベースの分析、2)保育施設でのフィールド調査、3)他分野での安全管理および諸外国の保育制度に関する調査、の実施を計画していた。昨年度に1)の関連データベースの分析を進め、この結果をもとに、今年度に2)の保育施設等でのフィールド調査を予定していたが、調査を依頼する団体・施設との調整が間に合わなかったため、次年度に調査を実施したいと考えている。また、他分野・諸外国に関する文献調査もより詳細に実施したいと考えており、未使用額をこれらの活動の経費に充てたい。
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