本研究課題では,ものづくり学習において教示方法の違いが及ぼす学習効果を認知神経学的に検証することを目的としたものである。令和2年度の研究成果を以下に示す。 ①失敗認識の有無が及ぼす学習効果の認知神経科学的検証(成果発表) 令和元年度に,失敗認識の有無がのこぎり引きに及ぼす影響を認知神経科学的に検証する実験を行った。具体的には,失敗を認識する群としない群に分け,両群の切断成績(切断時間と切断角度)と切断中の脳血流量を計測した。本研究により,中学校技術科ののこぎり引き学習を指導する際に役立つ示唆を得ることができた。令和2年度は令和元年度の研究成果をまとめ,オランダでオンライン開催された国際学会(EdMedia + Innovate Learning)において発表した。 ②ポジティブな情動が木工具操作に及ぼす学習効果と脳活動の検証 ポジティブな情動が木工具操作に及ぼす学習効果を認知神経科学に基づいて検証した。実験ではくぎ打ち中の脳血流量を2回計測した。具体的には,調査協力者を3群(1回目の計測後に,作業中の様子をほめる過程評価群,成果物のみをほめる結果評価群,何もほめない無評価群)に分けて実験を行い,技能成績と脳活動を考察した。その結果,切断成績と脳血流量の両面から,ポジティブな情動が木工具操作に及ぼす学習効果を確認することができた。本研究により,中学校技術科のくぎ打ち学習を指導する際に役立つ示唆を得ることができた。
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