本研究の目的は、多地域でのフィールドワークを通して収集した「美術教育を通したイスラムの実践」事例を、イスラムの教義と対応させて構造化することによってイスラム文化に即した美術教育の基礎理論を生成するとともに、それらを横断的に比較して、イスラムと美術教育との関係性をめぐる地域性を明らかにすることである。 現在、イギリスのUniversity College Londonにおいて実施中の国際共同研究強化(A)(課題番号:21KK0228)の基課題である若手研究「イスラムと美術教育との関連性に関する包括的研究」(課題番号:21K13582)につながる研究課題として、本年度はイスラム美術の関連資料・文献収集を大英博物館やヴィクトリア&アルバート博物館などで行ったほか、現代のムスリム・アーティストに関する資料もロンドン市内ギャラリー等で収集した。これらの資料は、イスラムと美術教育との関連をより多角的に考察するためのデータとして、今後の研究に活用してゆく予定である。 本研究課題では、研究期間前半の数年でフィールドワーク実施場所の可能性を広げたり、研究成果のまとめや報告を国際学会その他においてすることができた。後半はパンデミックの影響を受けたが、研究の方向性をより多様な文化を反映させた美術教育の探究へと修正したり発展させたりする時間を確保できたことで、大型の科研費獲得につながった。イギリスでの長期滞在という貴重な機会を生かして、当初計画していた学校でのフィールドワークを進めたい。
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