本研究の目的は,生徒が実験計画を立案する際に,自らの実験方法の妥当性及び信頼性をどのように評価・判断するのか明らかにすることであった。 当初日本の生徒の調査結果のみについて検討する予定であったが,それを発展させる形で,フィリピンとインドネシアでも調査を行い比較検討を行った。今回の結果が,それぞれの国の生徒の傾向を完全に表現しているわけではないだろうが,本研究から明らかになったことは以下のことである。第一に,どの国の生徒も,実験方法の妥当性や信頼性について自分なりの判断基準を有しているということである。このことは,科学的な正しさはともかく,生徒自身が自分自身の判断を基に,科学的探究に取り組めることを意味する。第二に,従属変数と実験において測定することについて,明確に区別できていないことである。第三に,外れ値の取り扱いについての理解は,どの国の生徒も不十分であることである。第四に,測定範囲と測定間隔に基づく妥当性の判断において,日本の生徒は両方を重視し,フィリピンの生徒は測定範囲の方を重視,インドネシアの生徒は測定間隔の方を重視するなど違いが見られたこと。 また,実験計画において妥当性や信頼性について判断することを求める実験活動を開発し実践した。その結果,第一に,実験活動に対する満足という肯定的な意識と,実験計画は困難で不安だという否定的な意識の両方が,生徒に保持されたこと,第二に,実験活動の目的や方法の理解,及び実験計画の意義の理解が深まったと生徒が感じたことが明らかになった。 以上の成果を基に,今後は,生徒自身の判断に基づいた授業をさらに検討することで,より探究的な授業を開発できることが期待できる。
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