高校の「保健」の指導要綱・教科書をもとに、大学生の健康に携わる医師・保健師からのエキスパートオピニオンを加えて、2件法の49項目からなる青年期の基本的医療関連知識評価尺度のパイロット版を作成した。これとすでに確立されているヘルスリテラシーの尺度であるHLS-EU-Q47 日本語版をあわせて大学生にWeb調査を行った。439人から回答を得た。因子分析の結果、「喫煙と咳」、「多様性の理解」、「日常生活の安全」、「疾病の知識」、「規則の理解」の5カテゴリーに分類された。2件法で、全体の正答率が91.3%と高かったため、内的一貫性はCronbachのαが0.37-0.83とそれほど高くなかった。一方で、それぞれのカテゴリーの正答率を20倍したものをカテゴリー得点とし、5つのカテゴリー得点の総和を0点から100点に分布する青年期の基本的医療関連知識評価尺度と定義したところ、4番目のカテゴリーの「疾病の知識」と総得点は、医学部・薬学部学生が他学部学生よりも有意に高得点であり、既知集団妥当性が示された。 今回のカテゴリーは指導要綱の分野とは関係がなく、同じ分野内でも項目間で正答率に大きな差が出た。また、項目の中で低い正答率であった項目は、ワクチン、自殺、避妊、Webリテラシーにかかわる問題であった。これらから、我々の定義した基本的医療関連知識評価尺度は、教科として学ばれる意図的学習(deliberate learning)だけでなく、日常生活やメディアから学ぶ偶発的学習(incidental learning)の寄与が大きいこと、ワクチンのようにミスリーディングは情報が多数ある分野や、自殺・避妊のように高校生の日常生活で話題にのぼりにくいことは正答率が低いと考えられた。このような分野にフォーカスして意図的学習を行うことが基本的医療関連知識の底上げに有効である可能性が示唆された。
|