研究課題/領域番号 |
18K13160
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池田 吏志 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (80610922)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 美術教育 / インクルーシブ / 障害学 / 美術館 / アート |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、特別支援学校と一般学校・地域社会との連携・相互理解を促進する美術科教育の交流及び共同学習プログラムを開発すること、そして特別支援学校卒業後の接続プログラムを開発することである。令和2年度には、次の3点に取り組んだ。 (1)広島県、広島県アートサポートセンターと連携し、広島県に在住・在勤する「障害のある人、サポートする人の表現および美術展覧会の鑑賞に関する実態調査」を実施した。本調査では、これまで実態が明らかにされてこなかった特別支援学校卒業後の障害のある人の表現活動や、美術館・ギャラリーでの美術鑑賞に焦点を当て、障害のある人及び支援者が生活の中でどのくらい美術に関わりを持っているのか、また、どのような点に表現活動や美術鑑賞の魅力や難しさを感じているのかを明らかにした。 (2)(1)の調査結果を踏まえ、広島県、広島県立美術館、広島県アートサポートセンターとの共同開催で、多様な背景を持つ人たちを対象にした、セミナー・ワークショップを実施した。本セミナー・ワークショップでは、ウィズコロナ時代の新たなアート活動の提案として障害のある方が出演したり創作したりする映像作品の制作を行った。広島県立美術館が所蔵する作品を「お題」とし、スマートフォンやタブレットを使った動画を制作し、作品をSNS上で発表した。 (3)文献研究として、美術教育の国際学会誌で1990年初頭から2020年の約30年間に公表された障害学と美術教育の複合領域を対象とした論文をレビューし、研究動向と今後の課題を示した。『Studies in Art Education』、『International Journal of Art and Design Education』、『International Journal of Education through Art』の3誌に掲載された7名の研究者による12編の論文を対象に、現在行われている教育の何が批判され、どのような理論的方向性が示されているのかを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)のアンケート調査では、当事者88名を含む、370名から回答を得た。集計の結果、特別支援学校卒業後に表現活動を行っている人が65%であったのに対し、鑑賞活動を行っている人は42%にとどまった。また、直接美術館やギャラリーを訪れることへの困難さが明らかとなった。このことから、鑑賞活動を充実させる必要性が示唆された。 (2)のセミナー・ワークショップでは、障害のある方3名を含む、障害のある方と日常的に接している方(保護者、障害者施設やデイサービス等の職員、特別支援学校教員、造形教室の先生等)7名の合計10名が参加された。鑑賞とデジタル機器を用いた制作とを一体化させた実践により、事後アンケートでは、すべての参加者が、「内容に満足している」、「新たな気づきを得た」、「同じ取り組みがあれば再度参加したい」と回答し、高い評価を得た。 (3)のレビュー論文では、美術教育の代表的な国際誌3誌に掲載された先行研究において、障害学が取り込まれた歴史的経緯や論点、そして今後の課題を明らかにした。 ただし、コロナ感染症の拡大により、参加予定であった学会大会等が中止になり、口頭発表やシンポジウムの機会は減少した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、次の2点に取り組む。 1点目は、昨年度からの継続研究として、多様な背景を持つ人たちが参加可能なアートを通した実践・交流プログラムを開発・実施することである。2点目は、アートと障害学を中心とした複数の分野を横断する学際的な美術教育の理論を形成することである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCOVID-19感染症の影響で、予定していた学会大会やシンポジウムが中止やオンライン開催となった。そのため、出張に伴う旅費の支出がほぼ無かった。繰り越された予算は、セミナー・ワークショップの運営経費や論文執筆・投稿のために使用する。
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