本研究最終年度である令和5年度は,応募者が開発した教材《ネクストステージ》を取り上げ,現職の小学校教員らと連携し,実際の授業実践において授業者が留意すべき点についての検討・考察を行った。その成果は,ソウルで開催された14th Asia-Pacific Symposium for Music Education Research(APSMER)2023において口頭発表を行った後,論文化して日本音楽即興学会誌『JASMIMジャーナル』において発表した。 本研究全体の目的は,即興的表現活動等とプログラミングを関わらせたカリキュラムを開発することであった。研究期間全体を通じて実施した研究の成果のうち,プログラミング教育と即興的表現活動等との関連性の検討をふまえて提案した〈演奏行為のアルゴリズムを構築する活動〉は,教材開発やカリキュラム・マネジメントの前提として位置づくものであり,新規性・提案性の高いものであると考えられる。さらに,〈演奏行為のアルゴリズムを構築する活動〉の具体例となる教材を開発したこと,実践の際の授業者の留意点を整理して示したことは,いずれも,実践のための具体性の高い提案となった。他方,小学校音楽科における6年間を見通したカリキュラムにおける他の諸活動との関連や位置づけについては,たえず検討を続けていたものの,成果発表には至らなかった。これについては今後の課題である。 また,本研究には,2点の副次的な成果もあった。1点目は,ICT活用を伴う即興的表現活動の具体例を示したことである。2点目は,即興的表現活動に関わる作品等を学校教育以外の現場でも複数実践・発表したことである。
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