研究課題
本研究は,数学的方法の活用過程に関して,計量言語学の視点から新しい研究方法論の開発を試みたものである.これまで,数学的知識・概念・方法を生徒達が活用するようになる過程については,構成主義の視座から,一人の生徒の振る舞いを教授実験という質的研究方法論を用いて分析することが多かった.事例の累積により,妥当性を高める努力はなされてきたが,量的調査の観点から妥当性を追究することは十分にできていなかった.そこで本研究が着目したのが,計量テキスト分析である.テキスト・マイニングの一手法であるこの方法であれば,生徒の産出したテキストという質的データの特徴を,コンピュータによる自然言語処理技術を活かすことで,量的に分析することができる.これまで生徒一人ずつの教授実験でしか調査し得なかったことも,生徒の産出したテキストを分析することで,量的調査の観点からも妥当性を追究することが可能になると考えられる.ただし,生徒達が頭の中で考えたことと,生徒達がテキストとして表現したことの関係をどのように捉えるかについては,これまでの構成主義の視座では十分に議論することができなかった.そのため,教育研究において「生徒の産出したテキスト」をどのように解釈してよいかについては,哲学的な観点から検討が必要であった.この点について,本研究は,推論主義と呼ばれる比較的新しい哲学に着目することにした.推論主義は,近年,数学教育研究において注目されている現代哲学で,表現することが概念化の作用を有すると捉える哲学である.この立場に立てば,表現できないことは,その程度でしか理解できていないと考えることができるようになり,「生徒の産出したテキスト」は,そのまま概念化の証拠として採用することができる.こうして本研究は,計量テキスト分析と推論主義の親和性を明確化し,新しい研究方法論の基盤を構築した.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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