本研究は、地域社会の担い手を育成するために小学校政治教育カリキュラムを開発・実践することを目的とした。実際の社会科授業では知識を暗記していく展開となっており、地域社会の課題に取り組むことが難しい実態があるからである。昨年度において附属学校教員等と連携して小学校政治カリキュラムを作成した。今年度は、そのカリキュラムに従い実践等を行い、考察を加えた。そのことは小学校教員と研究者が協働して地域社会に主体的に関わるカリキュラムの開発・実践を行うことで研究者による理論開発にとどまっていた内容を、実践的にもその有効性を検証できることに独自性がある。 カリキュラム開発に当たってはスコープ・シークエンス法を採用した。スコープである領域を設定し、配列であるシークエンスを設定することでどの学年に何を授業すべきかが明確となる。さらには、その原理に従えば柔軟に単元を組み替えることができる。それは、その地域ごとあるいは教員ごとの独自性をもった教育活動にもつながると考えられる。実際、開発したカリキュラムは社会的論争を教材とした単元構成で組み立てられ、議論してそれらの解決を目指すという独自性をもっている。 一方、実践においては学習者が地域における課題を明確にし、それについて意見を述べることができるようになった実践が多かった。これらの成果は単に知識を習得する政治教育に陥らない。市民社会への参加としての学習へと展開できる可能性がある。それらを理論的、かつ実践的に明確にしたことが本研究の成果であり、意義である。
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