本研究は,子ども達の算数科における説明に関する実態を解明することを試みる研究である。 本年度は,新たに中高生による説明の構造を明らかにした。中高生を対象としたのは,前年度で明らかになった小学校における「説明」が極めて曖昧であるという実態を踏まえ,小学校における教育を完了している中高生を調べることで,小学校を通してどのような学習が達成されてきたかを明らかにできると期待したためである。また,前年度までの研究成果(教科書分析)をまとめ,さらに発展させた。 具体的には,調査者の介入を極力抑えた中高生のペアが行う,間接的説明(背理法に準ずるような説明を指す専門用語)の構造をトゥールミンモデルによって構造分析した。この結果,いくつかの特徴を同定する事に成功した。この成果は,査読付論文として既に公開されている。 これらの特徴は,(直接的には中高生への示唆だが)算数科における説明に対する示唆も与えた。例えば,他者の主張を論駁しようとしないことが指摘された。こうした点が小学校算数においても十分指導されていないこと。また,「話し合い」という用語が持つ非対決的な意味合いと関連があることなどが指摘された。 また,前年度までの研究をまとめた小学校算数の教科書分析は,査読付きプロシーディングに掲載され(投稿は前年),本年度は更に他の教科書・(教師の)集団との比較を行った。特に,他の教科書との比較を通じて,前年度までに同定された成果が特定の教科書などに限定されたものではなく,我が国の小学校算数における一般的な特徴であることが明らかになった。これらの成果は,現在査読付き国際誌に投稿中である。
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