研究課題/領域番号 |
18K13169
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研究機関 | 共栄大学 |
研究代表者 |
太田 満 共栄大学, 教育学部, 講師 (80804385)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国 / サハリン / 残留 / 帰国者 / 教材開発 / 国際理解教育 / 人の移動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,中国・サハリン残留日本人を取り上げた学習(以下「残留日本人学習」)を検討し,移民学習の在り方を再検討することである。移民学習論は小学校から大学までの授業実践を例示するまでに発展してきたが,大日本帝国圏内の人の移動については取り上げてこなかった。本研究では中国・サハリン残留日本人を学習対象とし,既存の移民学習を再検討し、残留日本人学習の教材開発を行う。 当該年度においては、まず、中国やサハリンの残留体験者にインタビュー調査を行った。体験者は高齢で、早急にインタビューを行い、写真等の資料を収集する必要があるが、調査研究を着実に進めることができた。 また、国際理解教育研究の成果を手がかりに,サハリン残留・帰国者が抱える問題を取り上げた教材開発を行った。国際理解教育研究では,「人の移動」に関する教材開発がなされているが,「人の移動」については,「移動した(する)人」と同様,「移動できなかった/できない/しない人」にも着目すべきだと考える。日本人及び朝鮮人(韓人)のサハリン残留者は「移動できなかった/できない/しない人」事例の一つである。残留者の中には、すでに帰国した人もいれば,今なお残留している人もいる。それらの経験は重要な学習内容であり,残留は「人の移動」学習のキーコンセプトの一つとして位置づけられるべきだと考える。サハリン残留・帰国者学習は,国籍も民族も異なる多様な社会を生きてきた人々の経験と,北東アジア社会に広がる家族の様子を取り上げる点において,国民国家を基本枠組みとした相互理解のための教材とは異なる教育的価値を有すると考える。また,サハリン残留・帰国者学習の中にサハリン先住民の内容を加えることで,戦後も続く植民地主義の影響を考える機会を提供するものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国・サハリン残留日本人の方にインタビューを重ねると共に、写真等の資料収集を進めることができた。また、中国東北部(旧満州)に赴き、満洲移民に関わる歴史的遺物・遺構等を調査すると共に,中国人養父母を支援する中国人ボランティアや、帰国できない残留日本人へのインタビューを行うこともできた。フィールドワーク等で得たデータやインタビューは、教材化のための記録作業や整理を行った。また,韓国に赴き、The Korean Society of Education for International Understanding(韓国国際理解教育学会)に参加し、研究成果を発表して学術的交流を行うと共に、在韓サハリン残留日本人にインタビューをした。これらの研究成果は、論文「サハリン残留・帰国者学習の教材開発―国際理解教育の観点から―」にまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
残留日本人学習に関わる研究成果の分析を通して、残留日本人学習の方法を検討する。また、満蒙開拓平和記念館(長野県)などに赴き,体験者の語りや体験に関わる写真や教材等の収集を引き続き行う。国外では,サハリン(旧南樺太)等に赴き、「樺太移住」に関わる歴史的遺物・遺構等を調査すると共に,残留日本人へのインタビュー調査も行う。そして,フィールドワークで得たデータやインタビュー記録を整理し,教材化のための準備を行う。また,日本移民学会や日本オーラルヒストリー学会等にも参加し学術的な知見を得,残留日本人学習を世界的視野で検討できるように海外の教育学会にも参加し、意見交換を行う。
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