研究課題/領域番号 |
18K13177
|
研究機関 | 松蔭大学 |
研究代表者 |
立野 貴之 松蔭大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50564001)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ビジネスゲーム / マルチタスク / モデル化とシミュレーション / 情報の科学 / 情報Ⅰ / 教科「情報」 / 教科教育学 / 教育工学 |
研究実績の概要 |
2018年度の作業に基づいた教育プログラムの仮説モデルを開発し、検証のため1グループ3人程度に分けた実践授業を行った。実践では、Price Gameの行動ログや質問紙のデータを収集、参加者へのインタビューを行い、多面的な分析を行った。また、学生を対象に調査とマルチタスクに着目したタブレット利用を考慮した教育プログラムの開発と、その実践と検証を繰り返し実施した。 まず、学生64名を対象にビジネスゲームの授業実践と実践中のマルチタスクとビジネスゲーム実践の意識を分析した。ビジネスゲームの成績結果の上位群と下位群で比較した結果、上位グループはマルチタスクに関して有意に高くさらに意欲的で発見も多くゲーム成績に影響している可能性が示された。そして、ビジネスゲームにおけるマルチタスクの発生に関して詳しく分析を行うため学生30名を対象に実践と意識調査を行った。ビジネスゲームの実践中に、無関係なマルチタスクが発生した場合、学生の意識を阻害する傾向は見られなかった。更に、若者にとっての有効なビジネスゲーム実践の環境がどういったものかを検討するため、15名の学生を対象にタブレットとノートパソコンを利用したビジネスゲームのマルチタスクの発生状況と実践の意識調査を行った。それぞれの環境を比較したところ、全体のマルチタスクの頻度において大きな違いはなく、スマートフォンが若干ではあるが学生の意識が有意であった。 現段階では、授業中のスマートフォンの私的な使用は学習面に負の影響を与える可能性はぬぐえないが、授業中において禁止するのではなく活用していく検討が必要であることがわかった。また、スマートフォンは、学生が制御可能な学習端末になることが考えられ、ビジネスゲーム学習においてマルチタスクの発生は、意識への影響見られるが、負の影響は極めて少ないことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年1月以降に、高校生を対象とした調査と、マルチタスクに着目したタブレット利用を考慮した教育プログラムの実践を実施する予定であったが、コロナの影響で実施ができていない。しかし、一部前倒しをして行った、マルチタスクが発生しやすい状況にかかわる調査から、タブレットでマルチタスクを活用できれる可能性が見られただけでなく新たな知見が加えられた。そのため、開発したPrice Gameがモバイル性を重視したビジネスゲームを凌ぐ学習支援を行う学習環境になりうることを示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
マルチタスクは、シングルタスクに比べて生産性が低いといった否定的な側面が指摘されてきたが、マルチタスクを指導側によって完全に排除することは難しい。2019年度に示した結果は、初年次の学生を対象であったが、学生だけでなく高校生も同様に学習内容により取り組めることが予想される。今後は高校生を対象に実践を行い、高校生の意識面に配慮した学習環境の授業設計を進めていく。 高校生を対象に調査と実践を複数回実施し、一時点での分析に加えて時系列の変化に注目する分析にも重点を置く。また、各回で異なる参加者を分析対象にする実践と、マルチタスクの影響に関する調査を並行して実施し、プログラミングを伴う教育実践も視野に入れる。Price Gameの改良も実施し、仮説モデルの開発と検証の過程で、問題発見と改良の相互作用を繰り返しながら行っていく。そして、最終年度に向け現場で用いることで効果を検証する準備段階に入る。 2019年度以降の実践でマルチタスクの負の影響は確認されなかったが、今後も実践のデータの詳細な分析を継続することで、新たな条件を設定した実験を重ねることで、授業中のマルチタスクの正負の影響が浮き彫りになる可能性はある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、当該年度に計画していた高校生を対象とした授業における謝礼の支出を次年度以降に延ばし、使用しなかったためである。
2020年度は、システム開発と改良にかかわる支出は、調査と授業実践の知見により慎重に設計が必要であると考えるため、研究開始から3年目以降も経費が必要になる。2020年度は、出張旅費、消耗品費(デスクトップ、ノートPC、タブレットなど)、謝金(開発費)からの使用を主に計画している。また、コロナの影響がなくなれば、7月以降に開催される国内の発表や国際会議への参加を検討しているための旅費を使用する。
|