研究課題/領域番号 |
18K13178
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
森 薫 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90624859)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 替えうた / 音楽学習 / わらべうた / マイクロ・エスノグラフィ / 拡張的学習 |
研究実績の概要 |
2022年度は、コロナ禍以前に採集したデータをもとに論文執筆を行い、日本質的心理学会の学会誌『質的心理研究』22巻に採択され、掲載・刊行することができた。 論文のタイトルは「子どもの替えうた創出と共有 ――小学校音楽科授業の観察を通じた検討」である。要約は以下のとおりである。 「替えうたは,既存の歌の歌詞の一部ないし全部を改変したり,歌詞のない器楽曲の旋律にオリジナルの歌詞をつけたりしてうたわれるうたで,音楽学研究においてはわらべうたの一種と位置づけられる。本論文は,子どもたちが替えうたを創出してうたい,時としてそれを共有する過程と,そこにある意味を明らかにすることを目的とする。小学校第3学年の音楽科授業を対象とした1年間にわたるマイクロ・エスノグラフィを行い,子どもたちが自発的に替えうたをうたった65事例について量的・質的に分析・検討した。子どもたちはさまざまな場面で,教材となっている楽曲の旋律から替えうたを創出しており,その歌詞は,フィクション,そのときの心情,語義をもたないシラブルの3タイプに分類された。また,合奏曲〈くまのおどり〉の学習活動において生じた替えうた創出と共有の事例群をもとに,教室談話研究と拡張的学習の理論に依拠した解釈的な考察を行った。その結果,替えうたは多義的な音楽表現であり,子ども同士の符牒としての機能をもつこと,また,替えうたを創出しくり返しうたうことは,【矛盾】を契機とした学習対象の楽曲への【媒介する人工物】を用いた働きかけであると考えられ,その結果として子どもたちが楽曲の意味を拡張していることが明らかになった。」
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、子どもたちが学校での音楽学習での過程で替えうたをつくりだす現象を対象としている。そのうたの発現は、小さな声でつぶやくように行われることも多い。そのため、マスクをした状態の子どもたちを観察しても採集することが難しく、また、そもそも学校に継続的な観察に伺うことが難しい状況が続いていた。過去のデータから分析・考察して上述の論文を発表したが、さらにデータの収集に取り組み、新たな視点から分析することが不可欠である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は採集調査にご協力いただける学校園が見つかっており、準備を進めている。新たなデータを採集し、分析・考察を深めていく。 また、継続的な観察調査については依然として難しい状況にあるため、替えうた創出・共有のプロセスだけでなく、替えうたそのもの(すでに共有がなされ、子どもたちが親しんでいる替えうたにどのようなものがあるか)に焦点をあてた調査の実施も検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で調査のための旅費や人件費が発生しなかった。 2023年度についてはこれを使用することになる。
|