研究課題/領域番号 |
18K13180
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
原口 友輝 中京大学, 教養教育研究院, 准教授 (70630995)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Facing History / 道徳教育 / 考える道徳 / 中国 / 歴史的知識 |
研究実績の概要 |
本研究は、米国を拠点とするNGOである「歴史と私たち自身に向き合う」(FHAO)の手法が、中国でどのように取り入れられているのかを明らかにすることで、わが国の文脈においてどのような歴史的事実をどう教えることが考え判断する道徳につながるのかを考察するものである。 2020年度は、これまで成果の発表に加え、現在のFHAOのセミナー(オンライン)を受講することでFHAOの近年の動向を探るとともに、中国本土における学校訪問やインタビュー調査を行う予定であった。しかし訪中がかなわなかったため、オンライン上で授業資料を送ってもらうことにした。 まず3月19日から4月29日までの6週間、「ホロコーストと人間の行動」というセミナーを受講することで、FHAOの近年の変化を検討した。その結果、2007年に受講した同セミナーとの大きな違いは二点あった。第一に、内容がより歴史学に近づいていることである。以前は「人間の行動」自体に焦点があてられる傾向にあり、そのスタンスは変わっていないが、その歴史的な背景がより多く取り上げられるようになっていた。第二に、学習者に何らかの行動をとらせるというスタンスがより明確になっていることである。これは、学習者の行動変容を促すという点では肯定的に解釈できる反面、「人間の行動」に影響を与える要因の考察というFHAOのアプローチの特徴が相対的に減ってきているともいえる。 一方で、「南京外国語学校」で行われているFHAOに関する内容の授業資料を分析した。現在までのところ、その特徴としては第一に、FHAOの提供するカリキュラムに沿った授業が行われていること、まだ第二に、ジョン・ラーベの救援活動のように南京の歴史と絡めてホロコーストにおける人間の行動を生徒に探求させている点である。ホロコーストにおける人間の行動についての理解を深めるために、学校の地域で有名な歴史的出来事と人物の学習を行うという点は興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により渡航できず、中国での実践調査ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も訪中できるか不明である。したがってオンラインで資料をもらい受けつつ、オンラインでのインタビューなども行っていく予定である。あわせて、FHAOの中国担当者に、中国の教員のニーズや実践状況をインタビューする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に引き続き、2020年度も訪中できなかったため、交通費と人件費などの研究費を大幅に次年度に回すことになった。 今後の予定としては、可能となった時点で南京の学校を調査する。また、FHAOのスタッフと連絡を取り合ったうえで、北京や上海などでFHAO実践を行っている学校への訪問も行う。もし訪中が不可能な場合は、オンラインでの資料入手とインタビューを行う。これらにおいて未使用の人件費(通訳代)・謝金なども使用予定である。
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