本研究は,教員のメンタルヘルスの切り口として,人が精神的不安定をもたらす要因(リスク)を克服する過程で発揮される能力である「レジリエンス」に着目し,その向上を図る研修プログラムについて開発・検証することを目的とした。研究対象としては,その職務に特徴を持つ(松田,2010;岩田,2013)と報告されている,保健体育科担当教員を中心に検証していくこととした。具体的な研究課題としては、①教員の「レジリエンス」の様相を検証し、妥当な尺度の開発・評価を行うこと。②教員の「レジリエンス」を高める研修プログラムとして「ホールシステムアプローチ」を基にした手法を検討し,その効果を検証すること。③①および②の結果から,教員の「レジリエンス」を高める要因を明らかにし,教員のメンタルヘルスの維持・改善に寄与する研修プログラムについて検討することとした。 令和1年度からは、対象を保健体育科教員に限定せず調査し、発展的に上記の研究課題①と研究課題②について取り組んだ。具体的には、初等教育段階も含めた教員に対する質問紙調を実施し、保健体育教員の特徴について検討した。その結果、保健体育科教員は、他教科の教員と比較して個人内要因(自らの思考や行動の仕方)を中核にレジリエンスを発揮している様相が示唆された。また、「ホールシステムアプローチ」をもとにして事例的に検討した結果、「ワールドカフェ」、「チームビルディング活動」、「自然体験活動」がレジリエンスの向上に寄与する可能性が示唆された。今後、大規模調査による本研究結果の妥当性・信頼性の確認が早急に必要となる。
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