研究課題/領域番号 |
18K13185
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研究機関 | 岡崎女子短期大学 |
研究代表者 |
伊藤 理絵 岡崎女子短期大学, 幼児教育学科, 講師 (70780568)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 笑いの攻撃性の理解 / 意図理解 / 道徳的判断 / 道徳教育 / 幼小教育 / 感情理解 / 高度な心の理論 / 表情 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、嘲笑理解の発達を踏まえた幼児教育と小学校教育の連続性をもった道徳教育プログラムを開発することである。前期は、協力園での年長児への実験と、少数ではあるが、昨年度までの実験の協力児のうち小学生になった児童に対し、年長児と同様の実験を行った。横断的なデータだけでなく、少しずつ縦断的なデータを蓄積することを進めている。 また、小学1年生の6歳児と7歳児のデータを比較し、嘲笑の意図の理解の発達について他者感情理解と高度な心の理論の観点から、実験課題について検討した結果について学会発表を行った。加えて、小学1年生の実験で用いた冊子による課題を大学生向けに改変し、質問紙調査を実施した。嘲笑理解の発達過程における幼児期から青年期までの連続性について検討することを始めたところである。 後期は、協力園の保育者の先生方と振り返りを行い、日常の保育で見られる子どもたちの様子と先生方が日頃から感じている課題について意見交換を行った。実験と観察および現場の先生方のニーズも含めて、道徳教育プログラムについて検討していくことにし、年少児から年長児の子どもたちが、日常生活の中で、規範意識や道徳性に関してどのような経験をしているかを理解するため、特に、他者との善悪判断が異なった場合の子どもの対処方法を中心に観察を行った。 また、小学1年生の道徳科教科書から『にわのことり』(久保喬(作))を取り上げ、日常生活での経験を踏まえた道徳教育として「うれし泣き」「うれし涙」のような、“典型”的な表情と感情の不一致場面に着目し、その表情が意味する感情について考え、議論する道徳教育を提案し、論文化した。 3月には、笑いの攻撃性をどのように測定し、評価するかをテーマに学会発表を行う予定であったが、COVID-19により大会成立・不参加発表となった。発表を予定した一部の内容は、勤務校の学内研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年長児への実験と年少児から年長児の観察を中心に進めている。小学生への調査は、幼児と比べると数は少ないものの、年長児で調査していた幼児が小学生になり、追跡調査が少しずつではあるが進み、個人内変化を捉えるデータを蓄積している。幼児への実験結果については、協力園の保育者と振り返りを行い、意見交換を通して保育者の教育的配慮を知り、現場のニーズを把握することにも努めている。 幼児の観察から、幼児自身が選択して遊ぶ場面と保育者提供型の活動場面での幼児の姿や保育者の配慮を記録し、道徳性・規範意識の発達と教育の観点で接続期の道徳教育について検討できるようまとめている。 小学校道徳教科書では、自他の様々な感情を想像する道徳教育の方法の一つとして、表情と感情の一致・不一致への注目という教育的観点を提示した。 昨年度に研究環境が変わったことで、小学生への集団調査の実施が難しい状況は依然として続いているが、幼児と小学生に行ってきた笑いの攻撃性理解課題を大学生向けの質問紙調査に改変して実施・結果を比較することで、幼児期から青年期における高度な心の理論を含む嘲笑理解の発達の連続性を明らかにする方向に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
幼児期の嘲笑理解の発達を踏まえた道徳教育プログラムについて、特にアプローチカリキュラムとスタートカリキュラムに焦点を当てて開発するために、幼児期の実態を把握するため、これまでの幼児と小学生を対象とした実験に加え、昨年度後期から協力園での観察を行っており、2020年度も継続する予定であった。しかし、COVID-19の影響により、中断を余儀なくされている。 そのため、これまで蓄積してきたデータを整理するとともに、子どもの笑いとユーモアと道徳教育について、感情理解と心の理論の観点から捉えるため、先行研究レビューを行い、前期は論文執筆を進めることにする。また、小学校道徳教科書で取り上げられる笑いと表情および感情の分析も継続して行っていく。 幼児期および児童期を対象に行っている実験を大学生向けの質問紙調査が可能になるようにしたため、大学生に対してはオンラインでの調査を優先し、協力者への負担がない範囲で実施していく。 協力園や協力児の保護者とは、研究再開に向けて連絡を取り続け、研究を行う上で感染予防策が十分になされることを互いに確認した上で、実施する方向で進めていく。
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