研究課題/領域番号 |
18K13185
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研究機関 | 岡崎女子短期大学 |
研究代表者 |
伊藤 理絵 岡崎女子短期大学, 幼児教育学科, 講師 (70780568)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 嘲笑 / 笑い / ユーモア / 他者感情理解 / 道徳性 / 高次の心の理論 / いじめ防止 / 協働的保育 |
研究実績の概要 |
本研究は、幼児期から児童期における嘲笑理解の発達を踏まえた道徳教育プログラムの開発を目指している。2020年度は、COVID-19の影響により子どもと直接関わる調査ができなかったため、これまで蓄積したデータをまとめ、次年度以降の実験計画を検討した。 「子どもの社会的笑いとユーモアの感情と発達-両面性から理解する」(発達163, ミネルヴァ書房, pp.27-32)では、笑いとユーモアをポジティブな側面とネガティブな側面の両面から捉えた子ども理解の視点を提示した。「笑う‐笑われる」という関係性から、笑いが常に誰にとっても良きものであるとも言えないことを子どもの笑いのエピソードと実験結果から示し、道徳的実践の観点も含めて論じた。 「幼児期後期の嘲笑理解の発達:感情理解・心の理論・道徳性の観点から」(笑い学研究27, pp.19-37)では、年長児を対象とした感情理解課題、心の理論課題、笑いの攻撃性理解課題、笑いの攻撃性比較課題、絵画語い発達検査(PVT-R)の結果をまとめた。幼児期後期の嘲笑理解の発達には、語い年齢、他者感情理解、高次の心の理論、笑いに対する道徳的判断および故意性の理解が相互に関連している可能性が示唆された。 「幼児期の仲間関係におけるユーモア行動を育む協働的保育の一事例―笑われる子から笑わせる子へ―」(岡崎女子大学・岡崎女子短期大学研究紀要54, pp.9-18)では、幼児期における“いじめの芽”への対応として、仲間とどのような笑いやユーモアを共有しているかという視点から、普段関わりのない第三者からの評価も含めて適切に判断し、協働的に保育を行うことの重要性を提示した。 また、子どもの発達を踏まえた子ども理解、領域人間関係で育みたい規範意識と道徳性、学童期の認知・社会性・学校適応について執筆し、保育者養成を目的としたテキストにて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響で、当初予定していた調査を行うことができなかったものの、嘲笑理解の発達を踏まえた道徳教育の在り方について、これまでのデータから、幼児期から児童期にかけて、現時点で明らかになったことをまとめ、成果を発表することができた。 また昨年度までは、道徳教育について“笑いとユーモアについて考え、議論する”という観点で検討してきたが、今年度は、考え、議論するだけに留まらず、道徳的実践者として、幼児期からより良い社会をつくる担い手であるという実感や笑いを内省する力を育む教育・保育の在り方を提示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
協力園との話し合いを進めているが、次年度も子どもと直接対面する調査を行うことや協力園での定期的な観察は難しい状況である。引き続き、これまで蓄積したデータや道徳科教科書の分析を進めるとともに、オンラインでの調査が可能な年齢層での協力者を募り、嘲笑理解の発達について検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間中であり、引き続き、当該テーマについて研究を行う。データ分析・まとめに係る文献の費用、オンラインで行う調査に伴う費用(COVID-19の状況次第で可能であれば協力園での調査も行う)、学会発表のための参加費および学術誌への投稿に係る費用に使用する予定である。
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