本研究では、若手外国人研究者が大学や研究所で研究活動を展開する経路を明らかにすることを通して、日本でのキャリア構築にかかわる政策・現状・課題を明示し、若手外国人研究者のキャリア支援に関する知見を提示することを目的とする。 2022年度には、引き続き調査を行いつつ、積極的に学会発表や論文投稿など研究成果のまとめに尽力した。 具体的な成果は以下の通りです。(1)1990年代以降に日本で実施された大学教員人事改革について、政策主導・誘導型の観点から分析を行い、論文としてまとめた。具体的には、任期制の法制化、准教授の称号変更、テニュアトラックの導入について検討した。政府の人事改革は教員の流動化を促進し、学術的成果を高め、大学をよりダイナミックにすることを意図しており、肩書きとその責任を変更することにより、ヒエラルキーの打破と若手研究者の自立を図ることを目的としている。また、日本政府が財政支援によって大学にテニュアトラック制度を導入するよう誘導したことも検討した。このような改革は、日本における大学教員の伝統的なキャリアパスを崩壊させ、肩書き、雇用形態、昇進の面で多様な大学教員を生み出し、間接的に日本における研究水準の低下や博士号取得者数の減少につながっていた。(2)研究者のキャリア支援の一環として、日本で義務化されているファカルティ・ディベロップメント(FD)を中心に分析を行い、実施の現状と課題について検討を行った。特に若手研究者のキャリア支援(pre-FD)に積極的に取り組んでいる東京大学と京都大学の取り組みに焦点を当て、分析を行い、研究成果としてまとめた。(3)FDの具体的な実施内容については、アクティブラーニング(AL)に焦点を当てて検討し、政策上推進・実践されているアクティブラーニング(AL)について論文としてまとめた。
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