2020年度より開始したオンラインアンケートの回答を締め切り、結果の集計と分析を行なった。アンケートは日本とカナダの高等教育機関で学生相談に携わる心理学の専門家を対象とし、不登校の学生の模擬事例への見立ておよび対応について尋ねた。日本とカナダそれぞれで集められた回答の分析から、日本の学生相談の専門家は関係性を重視し、長期的なカウンセリング的関わりによる当該学生の人格的な成長を見据える傾向があることに対し、カナダの専門家の回答からは、当該学生との間でのカウンセリングの目的の明確化、回数制限をもうけるなど、明確な構造を重視した関わりを想定する傾向がうかがわれた。 このアンケートにより、大学生の不登校は我が国に特徴的な現象であるとされるが、そこには青年の心理の特徴だけではなく、専門家の意識に見られる違いも関係していることが示唆された。不登校の大学生への支援モデルとして、現在我が国の学生支援において主流になっている全人的成長を見据えた関与ではなく、目的を焦点化した支援のあり方についても検討することが、大学生の不登校という問題の解消につながる可能性が考えられた。 2021年7月には、不登校の大学生についてInternational Society for Psychology as the Discipline of Interiority 5th Congressにて口頭発表を行い、主に欧米諸国の心理学の専門家との討議を行なった。
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