研究課題/領域番号 |
18K13195
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
二ノ宮リム さち 東海大学, スチューデントアチーブメントセンター, 准教授 (90646499)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 対話 / 持続可能性 / レジリアンス / 大学教育 / ESD / 市民性教育 / シティズンシップ教育 / 社会教育 |
研究実績の概要 |
本研究は「『持続可能性』と『レジリアンス』の概念を軸にする『対話』を通じたアクティブ・ラーニングが、大学における『持続可能でレジリアントな社会を主体的に創造する市民』の育成につながる」という仮説に、実践を通じどのような可能性と課題が示されるかを問う試みとして開始した。その後、他の実践事例調査を踏まえ、研究対象を「大学」に限らない学校教育や社会教育に広げてきた。具体的には、「市民」の育成を評価する枠組を構築したうえで、教育実践に「持続可能性」と「レジリアンス」を軸とした「対話」を取り入れ、参与観察や学習者への聞き取り・質問紙調査による実証的評価をおこない、実践を修正しつつ、最終的に実践モデルを構築する。それにより、教育を通じた市民の育成を「持続可能でレジリアントな社会」という現代的課題を乗り越えるビジョンにつなげる具体的方策を示し、社会の創造に不可欠な「対話」の力とその教育における可能性と課題を明らかにすることを目指す。この目的の達成に向けて、2021年度は下記を実施した。 1.関連資料・文献レビュー:対話力や市民性と教育に関する先行研究を収集し、「持続可能でレジリアントな社会を主体的に担う市民の育成」を評価する枠組・基準の検討と修正を継続した。 2.関連実践事例の調査・聞き取り:持続可能性につながる対話やコミュニケーションを軸とした実践事例について情報を収集し、関係者への聞き取りを再開し、議論をおこなった。 3.「対話の教育」実践内容・方法の計画と試行:上記2や3を踏まえ「持続可能性」につながる「対話の教育」の具体的内容・方法の計画を進め、大学教育や社会教育の場で実践した。引き続き新型コロナ感染症による制約を受けたが、オンラインプログラムの計画・試行を通じ課題を検討した。 4.上記の成果を、書籍1件、研究論文1件、学会・研究会発表14件、講演・社会教育活動9件に反映した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画においては、4年目にあたる2021年度は最終年となり、調査・検討結果の全体をふりかえりまとめる年となる予定であった。しかし、2020年度には新型コロナ感染症の影響により大学教育に大きな混乱が生じ、研究計画が遅れることとなった。改めて2021年度はオンラインプログラムの開発や実践試行に取り組んだが、実践の展開が制約される状況は継続した。また、研究の進展の中で、大学教育に限らず社会教育にも視野を広げた調査を実施することとしたが、社会教育実践者との連携に2021年度も制約が続いた。こうした状況を踏まえ、研究計画の見直しをおこない、2022年度まで実施を延長することとした。2021年度終盤には、感染症の状況をみながら実践者への聞き取り調査等を再開した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画からの変更点として、既に2019年度の時点で、研究対象を大学教育から他の学校教育や社会教育にも広げることとした。これは、他の実践事例調査・聞き取りや関係分野の専門家との交流から、持続可能性につながる「対話の教育」が広く求められている現状と、既にあるそれらの分野における経験を分析する必要性を認めたこと、大学教育において、アクティブ・ラーニングの実現を含め教育の質向上を目指す中では、その他の学校教育や社会教育との連携が不可欠であるという認識に基づく。さらに、2020年度の新型コロナ感染症が教育に与えた影響を受け、オンライン環境下での「対話の教育」の可能性や、感染症をとりまく対立と対話、市民性や民主主義に対する課題にも視野を広げた。 大学における授業実践調査については、所属組織における研究倫理規定に関連した調整が必要となったが、2020年度以降議論と調整が進展した。新型コロナ感染症による大学教育・社会教育における制限は継続しているものの、対面での実施が大幅に可能となりつつあり、オンライン環境の活用ともあわせ、実践や聞き取りを展開し、最終年度のまとめに取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画において、3年目にあたる2020年度に構築した教育実践モデルを国内外の大学で試行し、調査を進め、2021年度に成果としてまとめる予定であった。しかし、2019年度の段階で所属組織における研究倫理規定に関連した調整が必要となり、実践の展開に遅れが生じていたとともに、2020年度は新型コロナ感染症の影響により大学教育にも大きな混乱が生じ、こうした実践・調査の展開が滞った。また、研究の進展の中で必要性が生じ、大学教育に限らず社会教育にも視野を広げた調査を実施することを予定していたが、社会教育実践者との連携にも大きな制約が生じた。 2021年度はオンライン実践へと視野を広げ計画を立て直したが、これまでの遅れから、研究期間を1年延長することとした。2022年度は聞き取りを継続し、次年度使用額はその謝金等や成果発表にかかわる経費として使用予定である。
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