研究課題/領域番号 |
18K13197
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
西野 毅朗 京都橘大学, 現代ビジネス学部, 専任講師 (20781602)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学士課程教育 / 帰属組織モデル / アクティブラーニング / ゼミナール教育 / 徒弟制度 / 質問紙調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、学士課程教育において日本的特質と注目される「帰属組織モデル」の存在を実証していくことを目的とし、人文・社会科学領域において伝統的に行なわれてきたゼミナール教育(以下ゼミ教育と表記する)に焦点を当てた調査分析を行うものである。 2年目となる2019年度は、量的調査の実施が主な成果である。量的調査は3種類実施した。第1に人文社会科学領域等の学科教育責任者(全2721学科)を対象とした全国調査である。本調査の結果、694件の回答を得ることができた。第2に同調査協力者が主催するゼミの学生に対する調査である。こちらは残念ながらおよそ50件の回収となり、信頼性にたる分析は難しいと考え、インターネット調査実施のためのプレ調査に位置付けることとした。第3に、このプレ調査を活用したインターネット調査としての、全国の人文社会科学領域等の4年次生を対象とした学生調査である。こちらは1030件の回答を得ることができた。 2019年度時点では、この第1の教員対象全国調査の結果を分析した。その結果、各ゼミの実施率は初年次ゼミ79%、教養ゼミ29%、専門ゼミ98%となった。専門ゼミの必修率は83%となったことも踏まえると、人文・社会科学領域等の学士課程教育において専門ゼミは重要な地位を占めていることが推察される。さらに、専門ゼミのクラスを学生が選べるとする割合は97%だった。逆に教員が選べる割合は、定員を超えた場合のみも含めると70%となり、学生ほどではないものの学生と教員が相互に選びあう関係にあることがわかる。また、卒業論文を課す学科も88%にのぼり、77%の学科は必修としている。一方卒業論文の評価基準をチェックリストやルーブリックなどで統一している学科は16%に過ぎないことも明らかになった。本結果については2019年度大学教育学会課題研究集会ならびに大学教育研究フォーラムにて発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年目となる2020年度が始まったが、新型コロナウイルス感染症問題の発生をうけ、当初予定していたインタビュー調査の実施は困難な状況である。 一方、2019年度末に実施した学生調査により膨大なデータを収集することができたため、本年度はこのデータの分析を始めている。当初計画では大学教員にのみ焦点をあてた研究する予定であったが、教育者と学習者という両目線からの研究に変更することにより、より多面的にゼミナール教育の実像を描き出すことができると考えている。従って、研究計画は変更しているものの、おおむね順調に進展していると自己評価した。 なお、2020年6月にオンラインで開催された大学教育学会第42回大会では「ゼミナール教育における学びの実態調査」と題した研究報告を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画の変更については、上記「現在までの進捗状況」で述べた通りである。今後は、手元にある人文・社会科学領域等の全国4年制大学学科調査結果と、全国4年次学生調査の結果の分析を進める。具体的には、(1)両調査の質的データの分析を行う。両調査ともにいくつかの自由記述欄を設けている。ここに書かれた内容について質的分析を行い、量的データからは読み取れなかったゼミナール教育の実態を描き出せるよう尽力する。(2)両調査結果の比較を行う。教員から見たゼミナール教育と、学生から見たゼミナール教育の共通点や相違点について明らかにする。(3)両データと理論との整合性を確認する。本研究テーマである「帰属組織モデル」に照らし合わせたとき、実際のゼミナール教育はそれにどの程度あてはまるのか、あるいはあてはまらないのかについて検証し、モデルの実証に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
現時点での計画では、手元にあるデータの分析に注力することとしているが、新型コロナウィルス感染症問題が収束に向かうことがあれば、インタビュー調査についても可能な範囲で実施したいと考えている。もし可能になった場合には、旅費が必要となるため、その分を念のため計上している。
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