研究実績の概要 |
本研究の目的は、大学生の〈経験学習〉と〈人生の見通しの形成〉との関係構造を解明することにある。2020年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、理論研究に注力した。 理論研究として、人生の見通しの形成の基礎にして経験学習プロセスとも結びつくアイデンティティ形成についての研究を進めた。研究成果として、ジェームズ・E・コテ、チャールズ・G・レヴィン著『若者のアイデンティティ形成―学校から仕事へのトランジションを切り抜ける』を翻訳出版した。同書は、アイデンティティ形成というテーマにおいて、社会学と心理学の知見を総合した研究書である。現代を個人化するアイデンティティ形成の時代と把握し、その中で人生の目的と展望を築くこと、さらにその展望に向けて行動を起こすことの意義を明らかにした研究である。同書の訳者解説では、同書の特長として、理論研究と実証研究と実践的な議論を繋ぐことの意義を強調した。 A Theoretical Framework on Reflection in Service Learning: Deepening Reflection through Identity Developmentという理論研究を公刊した。Service Learning, Educational Innovation and Social Transformationというテーマの特集のもと、リフレクション深化プロセスの理論枠組みを構築している。サービス・ラーニング、大学生の成長理論、教師教育、対話的自己論にわたるリフレクション理論とアイデンティティ形成理論を結合することで、リフレクション深化の過程におけるラーニング・ブリッジングがエージェンシー発揮の契機でもあること、それらが人生目的の構築とアイデンティティ形成にとっても重要なプロセスであることが理論的に接続して提示された。
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