本年度は、近年の退学に関わる支援策の現状と課題に関する内容の確認と、コロナ禍以降の退学防止やその支援策の特徴の抽出を目指した。まず、これまで得られた大学の自己点検・評価のデータの再収集し分析を行った。その結果、大学によっては綿密な取り組みが行われている場合もあるが、大学の規模に関わらず、入学直後の初期適応を促す取り組み、退学の可能性が高い学生に対する面談、クラス担任制といった基礎的な退学防止の支援内容を確認するに至った。また、コロナ禍以降の退学防止に関わるデータは十分には収集することが出来なかったが、これまでのデータと共に、退学の要因や原因の分析などデータに基づく実際の取り組みは少ない現状が読み取れた。大学の学生数によらず大学運営として、学生状況の把握を支援策の組織決定への結びつけが、データに基づいて行われにくいことによると推測された。退学防止に関して支援対象へのエビデンスに基づく教学上の援助に移していくことには課題があることが示された。多くの大学において、面談などの即応的で個別的な支援が重視されていて、退学防止策の効果検証を含めた包括的な支援が発展途上にあることがわかった。他方で、急速に変化していったコロナ禍やそれ以降の退学の状況についての計量的分析はできておらず、現代の退学防止状況の再整理や退学防止モデルを策定することには至らなかった。今後のウィズコロナの進展において、退学や退学防止に関わる信頼あるデータの蓄積が求められる。
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