本研究は、米国の大学における学生支援にかかる「評価基準」の理念・目的、具体的内容に焦点を当てることで、その特徴や最新の動向、今後の検討課題の抽出を含め、制度面から実証的に考察することを目的として実施してきた。その際、評価やアセスメントといった観点から米国の大学教育における学生支援の質保証のあり方を展望することも目指して取り組んできた。こうした米国における学生支援を巡るプログラムの評価とその基盤を支える基準(スタンダード)に関する知見を導出することは、今後の日本の大学における学生支援にかかる質保証のあり方や評価に加え、制度的な体制構築の可能性に一定のインプリケーションを見い出すことができた。 本研究課題のうち、当該年度は、「①『活動プログラム』をめぐる『全米基準』の内容と特徴」について、新たに収集・入手したCAS(学生支援の総合専門職の団体・評議会)の文書資料に基づき、その実態を実証的に明らかにできた。具体的には、上記のCASでの「領域横断的フレームワーク(Cross-Functional Frameworks)」の一つで基準(スタンダード)として刊行されている「初年次経験(First-Year Experience)」の領域を分析した。最新のウェブサイト情報等ともあわせて詳細に検討したことで、近年米国の大学教育における学生支援を巡る学習成果の変容やそれに関連する学生支援の評価やアセスメントの基準的、制度的な位置づけが変化してきている、という知見が得られた。 以下、主な研究実績として2点あげられる。 第1に、CASでの「領域横断的フレームワーク」での「初年次経験」の基準(スタンダード)の文書資料が新たに収集でき、実際に検討できたことである。第2に、「雑誌論文」の一部であるが、共著で上記の検討結果を投稿し、査読付き研究論文として掲載することができた。
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