本研究課題ではASD児者が情動制御において困難さを有する場面を抽出した。その中で特に、不安や悲しみ、落ち込みの持続性に関わる指標が大きな割合を占めていることが判明した。この困難さは、親子や、親と学校の相談頻度と強く相関していることが明らかとなった。一方、ASD症状の強さと、上記の困りは負の相関関係であった。これより比較的ASDの症状が弱いASD者において高くなりやすい困りであることも示唆された。他にも、怒りやいらつきの抑制、あわれみや共感の表出、社会場面で望ましい感情表出といった要因について、ASD児者の情動制御の支援ニーズがあることがうかがわれ、教育的評価上の観点となりえると考えられた。
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