研究課題/領域番号 |
18K13206
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
寺本 淳志 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (70713345)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 先天性筋疾患 / 乳児期重症型 / コミュニケーション / 教育的支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は乳児期発症重症型先天性筋疾患児に対する、意思表出手段の獲得のための支援に留まらない系統的な教育的支援の在り様を検討することである。そのために、(1)質問紙調査により全国の当該疾患の児童生徒に対する教育の現状及び担任らの意識を明らかにすること、(2)保護者への面接調査により、当該疾患児の育ちのプロセスに関する知見を蓄積すること、(3)継続的な教育的係わり合いの実践資料を蓄積し、その実相を明らかにすることである。本年度は(2)に関して1名の保護者への聞き取りを行い、ライフストーリーの形で対象児の意思表出等の変化及び周囲からの認識の変容についての検討を行った。昨年度聞き取りを行った事例と比較すると、不明瞭ながら発声があること、目を動かすサインの随意性の高さにより周囲からの受け止めが大きく異なっていた。対象児の言語理解の豊かさに比して、文字による表出を可能とする支援機器等の環境が整わなかったことにより表出方法は限定的ではあったものの、周囲が明確に「わかっている」ことを意識した働きかけを重ねたことで、様々なやり取りの機会が保障されてきたことの重要性が示された。(3)に関して、昨年度同様2名の対象児について、筆者自身の家庭訪問による実践(事例1)と、福島県立須賀川支援学校に置ける担任らによる指導実践(事例2)及び授業検討を重ねてきた。事例2では視線入力装置の導入により対象児の意思表出行動が広がりを見せている。本事例はまだ双方向的なやり取りの形成という点では不明確な段階ではあるものの、担任らの丁寧な読み取りと、本児が可能な形での様々な意思表出を促す働き掛けもあり、周囲による本児の発信への読み取りやその検証が地道に続けられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画書においては(1)の目的に対応する質問紙調査を初年度に今年度実施予定であったが、質問紙作成の遅れもあり、対象となる学校の状況を勘案し、実施を見送ることになった。(2)の目的については、本年度までに2事例について聞き取りを行っており、今後もう1名ご協力をいただく予定であるが、遠方の対象者であるため、日程調整の関係で今年度の実施には至らなかった。(3)の目的に関しては、福島県立須賀川支援学校の対象児について、担任教員による実践に加えて、筆者個人による病院への訪問を実施予定であったが、病院内での秋期からのインフルエンザ等の発症などにより、病院への訪問自体認められなかったため、開始が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は新型コロナ感染症の流行により、(1)に関する質問紙調査、及び(3)の教育実践の実施にすでに影響が出ており、現在推移を見守っているところである。が、コロナへの対応により学校現場及び対象児童が入院している病院の対応が難しいことが予想されるため、状況によっては1年の研究期間の延長についても検討を行っている。(2)については、現在承諾を得ている対象者との調整を行い令和2年度中に聞き取り及び分析を行う予定である。(3)については、現時点では担任教員らによる授業実施も見送られている状況であるが、今後授業が開始されれば担任教員らによるデータ収集は可能となるため、その蓄積及び共同での分析を進めていく。筆者による学校への訪問と授業検討については、秋以降に実施予定であり、令和2年度中に4回ほど予定されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度質問紙調査を実施することができず、関連する調査用紙や封筒の代金、印刷費などが残額として生じることとなった。次年度、もしくは調査協力者への負担を考慮して研究期間の延長を申請した場合には令和3年度にずれ込んで質問紙調査を実施する予定であり、その際にそれらの費用として使用する。
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