本研究では、就学前施設から就学後の学校(小学校通常学級、特別支援学級、特別支援学校など)における「学校・学部段階間の深い学びの接続」をテーマとして、特に幼児期の保育・療育から学童期(小学部)に至る移行において、学びの継続を含めたよりよい就学移行支援を導くための理論や方法を明らかにすることを目的とした。本年度は、昨年度感染症の影響で送れていた事例のデータ収集とそのまとめを含めて、これまでの研究の総括を行った。 おおよそ細かい研究から得られた成果は以下の通りであった。 ①事例検討のまとめ。これまでの就学移行では「引継ぎ」に重点が置かれていた一方で、新生活環境での適応に向けて、それらが十分に活用されていない実態があった。引継ぎ内容・文章が活用されるためにも、その情報が引き出され、活用される文脈そのものを(教育課程を含めて)検討する必要があると考えられ、それを加味した就学移行の事例検討を行った。検討の内容をまとめ、学会誌に投稿した。 ②引継ぎだけに依存しすぎない就学移行枠組みの検討。これまでの行ってきた調査研究、事例検討、教育課程に関わるシンポジウムでの議論などを踏まえて、就学支援移行支援の枠組みを整理した。ポイントは2つであり、一つは「いかに就学前の情報を、就学後のカリキュラムにも生かされる形に変換・媒介できるか」という点であり、もう一つは「いかに様々な情報を就学後の環境適応に生かせるか」ということであった。就学移行先として、通常学級、支援級、支援学校など複数あり、それぞれで求められる/実際的に扱えることのできる情報の内容や種類にも違いが出てくる。そうした状況を超えて実践を導くことのできる就学移行モデルの検討を続けた。
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