研究課題/領域番号 |
18K13213
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
加藤 浩平 東京学芸大学, 教育学研究科, 研究員 (20812481)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症(ASD) / Quality of Life(QOL) / 余暇活動支援 / 会話型ロールプレイングゲーム(TRPG) / コミュニケーション支援 |
研究実績の概要 |
今年度は、教育・療育の現場でも使用可能な会話型RPG(TRPG)プログラムのプロトタイプ着手のベースのための自閉スペクトラム症(ASD)児を対象にしたTRPG活動における進行役のゲームマスター(GM)の役割に関する研究と、TRPGを用いたASD児への介入研究と、国内外での研究発表をおこなった。まず、TRPGにおけるASD児の会話促進の中でも進行役のGMの役割に焦点を当てて検討する研究をおこなった。10代のASD児4名を対象に、TRPG活動(全5回)を記録し、第1回と第5回の開始10分後の場面を各5分ずつ抜き出し逐語録を作成し会話分析をおこなった。分析の結果、参加児への問いかけへの回答や意思決定の確認に関するGMの発話は増加し、逆にルール説明に関するGMの発話は減少した。GMが提示する物語の流れや参加児の問いかけ等に従いながら話すことで、参加児の興味関心が保持されGMによる会話の交通整理で順番や他者の発話を意識した発話が増えたことが示唆された。介入研究は、知的障害のない10代のASD児者15名(1グループ各4~5名)を対象に全5回予定のTRPG活動を実施し、活動の事前・事後のコミュニケーションおよびQOLの変化の比較を目的とした。対象者の募集は、東京都自閉症協会、一般社団法人読み書き配慮などを通しておこなった。事前・事後の評価尺度として、日本版子どものQOL尺度、子どものコミュニケーションチェックリスト(CCC-2)などの質問紙を実施した。活動はビデオカメラとICレコーダーを使用して記録した。国内外での研究発表については、2019年5月に開催された日本コミュニケーション障害学会学術講演会(倉敷市)、同年9月に開催された日本質的心理学会(東京)、日本LD学会大会(横浜市)などでおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目の今年度は、教育・療育の現場でも使用可能なTRPGプログラムのプロトタイプ着手のベースとなるASD児を対象にしたTRPG活動における進行役のゲームマスター(GM)の役割に関する研究をおこない、また、TRPGを用いたASD児への介入研究のための参加児15名の募集も東京都自閉症協会ほかの協力のもと実施できた。また研究経過についても複数の学会で発表することができた。しかしながら、今年度の研究計画のメインであるTRPGを用いたASD児への介入研究が、新型コロナウイルスの感染拡大による三密に関わる活動の自粛が政府より要請され、研究活動の延期を余儀なくされた。またTRPGプログラムのテストプレイも実施を延期せざるを得ない状況である。それらの影響により、本研究は予定よりやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は、2年目の途中で新型コロナウイルスの影響で延期していた知的障害のない10代のASD児を対象にしたTRPGを通じた介入研究を再開する。参加児の中で再開時に協力を得られない場合は、必要に応じて、これまでの研究協力団体を通じて、参加児の再募集もおこなう。また同時に、TRPG活動に参加したASD児のうち、面接調査の協力を得られた児を対象に「活動への満足度」および「活動を通して感じた自分の変化」についての面接調査を行う。面接内容はICレコーダーで録音後、逐語録を作成し、質的な分析・検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究計画のメインであるTRPGを用いたASD児への介入研究や、教育・療育の現場でも使用可能なTRPGプログラムのプロトタイプの開発が、新型コロナウイルスの感染拡大による三密に関わる活動の自粛が政府より要請され、結果として研究・開発の延期を余儀なくされたため。翌年度分として請求した助成金と合わせて、今年度実施できなかった研究については、実施可能な条件が揃った段階で迅速に実施を進め、またオンラインによる開発打合せやインタビュー調査などで代替できるかどうかの可能性も検討し、研究をすすめていく予定である。
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